健康食品・サプリメントの輸入リスク|添加物違反が89%を占める特殊カテゴリーの実態

この記事でわかること
厚生労働省の輸入食品違反事例データ(2002〜2025年)に記録された健康食品・サプリメントの違反185件を完全分析しました。185件中164件(89%)が添加物違反という突出した構造の理由、保存料・甘味料・抽出溶媒・賦形剤・製造補助剤など「健康食品に特有の添加物問題」の実態、さらにNMN製品・CBD製品・ローヤルゼリーなど注目カテゴリーの具体的な違反事例を解説します。

【データ出典】厚生労働省「輸入食品の違反事例」(平成14年〜令和7年)。件数はすべて本データの集計値です。本データの「食品グループ:健康食品」に分類された事例を対象としています。

1. 185件の全体像:添加物89%という特異な構造

185件健康食品
違反総数(23年間)
164件添加物違反
(88.6%)
9件有毒有害物質
(シアン化合物)
7件動物用医薬品
(ローヤルゼリー等)

健康食品カテゴリーの最大の特徴は、違反の88.6%が添加物違反に集中していることです。これは全食品グループの中で突出しており、微生物違反が多い水産物(47.9%)や農薬残留が多いナッツ・穀物と、違反の質が根本的に異なります。

違反タイプ 件数 割合 主な内容
添加物 164件 88.6% 指定外添加物(102件)・使用基準不適合(73件)※重複あり
有毒有害物質 9件 4.9% シアン化合物(全9件):亜麻仁含有健康食品・植物エキス
動物用医薬品 7件 3.8% ローヤルゼリー製品のクロラムフェニコール・テトラサイクリン系
カビ毒 1件 0.5% インド産ひまわりエキスのアフラトキシン(2024年)
放射性物質 2件 1.1% ビルベリーエキス(イタリア産・アメリカ産)のセシウム
その他 2件 1.1% フェオホルバイド(オーストラリア産)・放射線照射(中国産)

164件の添加物違反をさらに分類すると:指定外添加物(日本に指定がない物質の使用)が102件、使用基準不適合(指定はあるが量・対象外)が73件です(一部重複)。

2. なぜ健康食品の違反は添加物に集中するのか

健康食品の違反が添加物に集中する理由は、食品全般と異なる製造プロセスに起因します。

  • 植物エキス抽出に有機溶媒を使用する:サプリメントの有効成分(植物ポリフェノール・フラボノイド等)を濃縮抽出する工程では、ヘキサン・メタノール・ジクロロメタン・ペンタン等の有機溶媒が用いられます。輸出国では「加工助剤(処理後に除去)」として認められていても、日本ではそもそも指定添加物でないか、対象外の食品への使用とみなされます。
  • カプセル・錠剤に賦形剤・滑沢剤を使用する:錠剤やカプセルの成形には、ステアリン酸マグネシウム・ラウリル硫酸ナトリウム・ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の添加物が必要です。これらは欧米の医薬品・サプリメント規制(USP・EP等)では認められていても、日本の食品添加物指定リストに収載されていない場合があります。
  • 保存・品質維持に保存料を使用する:植物エキス・液状サプリメントの長期保存のために、パラオキシ安息香酸エステル類(パラベン)・ソルビン酸系・安息香酸系が用いられます。これらは日本でも指定添加物ですが、食品への使用基準が健康食品向けには整備されておらず「対象外使用」となります。
  • 甘味・風味付けに甘味料を使用する:サプリメント(グミ・ドリンク形状)の苦み・酸み抑制のために、サイクラミン酸・スクラロース等の甘味料が添加されることがあります。特に中国産のBCAA・アミノ酸系商品に多い。
  • 「健康食品」として輸入しても食品衛生法が全面適用される:「医薬品ではなく食品」として輸入するため、食品衛生法の添加物規制が全面的に適用されます。輸出国の医薬品補助剤規格(GMP等)は日本の食品添加物基準の免除理由になりません。
「海外で合法・認証済み」は日本の食品添加物規制をクリアしない:
FDA承認・EU承認・GMP認証を受けた製品であっても、日本の食品衛生法上の添加物規制は別途適用されます。欧米の医薬品・サプリメント製造で標準的に使われる補助剤・溶媒の多くが、日本では「指定外添加物」となります。製造工程全体の添加物確認が不可欠です。

3. 国別・年別の傾向:中国36%・アメリカ22%

国別内訳(添加物164件)

🇨🇳 中国

60件(36.6%)

🇺🇸 アメリカ

36件(22.0%)

🇫🇷 フランス

12件(7.3%)

🇰🇷 韓国

8件(4.9%)

🇵🇪 ペルー

7件(4.3%)

🇧🇷 ブラジル

5件(3.0%)

🇭🇰 香港

5件(3.0%)

中国(60件)とアメリカ(36件)で全体の約6割を占めます。両国は健康食品・サプリメントの一大産地ですが、違反の質が異なります。

件数 主な違反物質 主な商品タイプ
中国 60件 サイクラミン酸(19件)・二酸化硫黄(9件)・パラオキシ安息香酸メチル(12件) 植物エキス・BCAA・アミノ酸系・NMN
アメリカ 36件 パラオキシ安息香酸(多件)・ソルビン酸対象外・ペンタン・ヒドロキシプロピルメチルセルロース・キノリンイエロー CBD製品・植物エキス・ビタミン・ローヤルゼリー・ビルベリーエキス
フランス 12件 ソルビン酸対象外使用(5件:ゴツコラ・ラズベリー・メリッサ・エキナセア・ギンコウエキス)・二酸化硫黄(3件:フルーツエキスパウダー) 植物エキス(ハーブエキス各種)
ペルー 7件 パラオキシ安息香酸(3件)・着色料(キノリンイエロー・アセチルレッドB:キャッツクロー) 熱帯植物エキス(キャッツクロー等)

年別推移:2002〜2003年と2020〜2022年に山

健康食品違反は2002年(15件)・2003年(24件)に最初のピークがあり、その後は年5〜15件台に低下、2020年(10件)・2021年(6件)・2022年(10件)と再増加しています。2002〜2003年のピークはパラオキシ安息香酸系違反が集中した時期(35件中26件が2002〜2008年)。2020〜2022年の再増加はNMN製品・CBD製品など新興カテゴリーの台頭と一致しています。

4. 保存料系(65件):パラオキシ安息香酸・ソルビン酸・二酸化硫黄

パラオキシ安息香酸エステル類(パラベン)35件
違反物質の詳細 パラオキシ安息香酸メチル(最多)・パラオキシ安息香酸エチル・パラオキシ安息香酸プロピル・パラオキシ安息香酸ブチル(複数が同時検出されるケースも多い)
主要産地 中国(12件)・アメリカ(7件)・ペルー(3件)・タイ(2件)・ブラジル(2件)・カナダ(2件)・ベトナム(2件)
主な商品 アガリクスエキス(ブラジル産)・ローヤルゼリー製品(カナダ・タイ・オーストラリア産)・GREEN SUPER GARLIC・植物エキス各種
年別傾向 2002〜2015年に集中(30件)。近年はゼロではないが急減している
日本での規制 パラオキシ安息香酸エステル類は日本では食品への使用が「キャビア・醤油・果汁・シロップ・酢」等に限定。健康食品への使用は「対象外使用」となる。また「メチルエステル」は「指定外」とされているケースがある
【実務上の注意】パラオキシ安息香酸エステル類は欧米・中国のサプリメント製造で標準的に使用される保存料(パラベン)です。FDA・EU規制下では植物エキス・ローヤルゼリー等への使用が認められていますが、日本では食品としての使用可能品目が極めて限定的です。
ソルビン酸(対象外使用)約16件
主要産地・商品 フランス産植物エキス(5件:ゴツコラ・ラズベリー・メリッサ・エキナセア・ギンコウエキス)・アメリカ産(5件:CBD製品・植物エキス等)・中国産
違反パターン ソルビン酸は日本の指定添加物だが、使用できる食品(チーズ・マーガリン・ケチャップ等)が限定されており、健康食品への使用は「対象外」となる
注目事例 フランス産ハーブエキス5品目(GOTU KOLA・FRAMBOISIER・MELISSA・ECHINACEA・GINKGO)が同一輸入者による同時違反(2021年)
二酸化硫黄(亜硫酸塩)14件
主要産地・商品 中国産植物エキス(9件)・フランス産フルーツエキスパウダー(3件)・台湾産・その他
特記事例 NMN(β-ニコチンアミドモノヌクレオチド)製品での二酸化硫黄:14 g/kgという突出した高値(通常の乾燥果実基準2.0 g/kgの7倍超)が2024年に検出(中国産NMNH)
発生メカニズム 植物エキスの製造・乾燥工程での品質保持・褐変防止に亜硫酸塩が使用されるが、健康食品への使用は対象外とされるケースがある

5. 甘味料系(26件):サイクラミン酸・アセスルファムK・スクラロース

サイクラミン酸(チクロ)21件
主要産地 中国(19件)・香港(1件)・台湾(1件)
主な商品 BCAA・イソロイシン系(IBCAA等)・植物エキス(リンゴンベリー・ビルベリー・エゾウコギ・キンギンカ等)・冬虫夏草エキス・海棠子エキス等
検出値の幅 最小5 μg/g〜最大1,201 μg/kg(IBCAA製品)・490 μg/g(健康食品)・320 μg/g・290 μg/g等
年別傾向 2012〜2022年にわたって継続検出。近年(2020〜2022年)も毎年2〜3件ずつ発見されており、終わっていない問題
発生背景 中国では一部食品へのサイクラミン酸使用が許可されている。植物エキスやアミノ酸系商品の甘み調整に使用されていると推察される。「フレーバー改善」目的での使用も考えられる
【実務上の注意】中国産の植物エキス・アミノ酸系健康食品は、サイクラミン酸の試験を優先事項とする。特にフルーツ系フレーバー・甘み成分が含まれると推定される商品は要確認。

アセスルファムカリウム(3件)・スクラロース(2件)も健康食品で検出されており、台湾産・中国産のサプリメントドリンク・グミ型健康食品で使用基準超過が問題となっています。

6. 抽出溶媒系(17件):ジクロロメタン・ペンタン・メタノール・ヘキサン

健康食品特有のリスクが抽出溶媒です。植物エキス・油脂系成分の抽出に使用される有機溶媒が、製品中に残存した状態で輸入される事例が17件記録されています。

溶媒 件数 主な商品(産地) 違反の種類
ペンタン 3件 CBD TINCTURE(アメリカ産:MUSHROOM UNWIND・FOCUS・CBD WATER SOLUBLE PWD) 指定外添加物
ジクロロメタン 1件 β-ニコチンアミドモノヌクレオチド(中国産NMN原料) 指定外添加物
メタノール 2件 Cannabidiol(アメリカ産)・柑橘フラボノイド(スペイン産) 指定外添加物(870 ppm検出)
ヘキサン 1件 GINGER POWDER EXTRACT 5%(インド産) 使用基準不適合(対象外使用)
N-ブチルアルコール 1件 大豆胚芽エキスパウダー(ベルギー産) 指定外添加物
ナトリウムエトキシド 3件 DHA含有魚油(イギリス産)・OMEGA-3 WITH VITAMIN D(アメリカ産) 指定外添加物
酸化エチレン 1件 生旺素(シンガポール産植物エキス) 指定外添加物
イソプロパノール 1件 5-Aminolevulinic acid phosphate(中国産) 使用基準不適合(対象外使用)
酢酸エチル 2件 MILK THISTLE EXTRACT(アメリカ産)・SOYBEAN ISOFLAVONE(中国産) 使用基準不適合(対象外使用)
過酢酸 1件 キャッツクロー粗挽き(ペルー産) 指定外添加物
エポキシエタン 1件 ARINDO(中国産カプセル入り) 指定外添加物
抽出溶媒は「加工助剤」として見落とされやすい:
抽出溶媒は通常、最終製品には残存しない「加工助剤」として使用されます。しかし残存が確認された場合、日本では「指定外添加物の使用」または「使用基準外使用」として違反となります。サプライヤーの成分表(COA)に「残留溶媒」の項目がなければ、問い合わせて確認する必要があります。特に植物エキス濃縮品・油脂系サプリメントは残留溶媒の確認が必須です。

特に注目すべきはCBD製品でのペンタン使用(3件・アメリカ産・2022年)です。ペンタンはCBD(カンナビジオール)の抽出・精製工程で使用されることがあるブタン系溶媒ですが、日本では指定外添加物となります。CBD製品は2020〜2022年に輸入が急増した新興カテゴリーであり、製造工程の管理が追いついていないケースが存在します。

7. 酸化防止剤系(13件):TBHQ・トコフェロール誘導体

TBHQ(tert-ブチルヒドロキノン)9件
主要産地・商品 オーストラリア産プロポリスソフトカプセル(2件)・中国産RICE BRAN OIL EXTRACT・ノコギリヤシオイル(インド産)・各種油脂系健康食品
発生メカニズム プロポリス・魚油・植物油等の油脂を含む健康食品の酸化防止にTBHQが使用されているケース。日本では指定外添加物
微量でも違反 最小0.001 g/kg〜最大134 μg/gまで幅がある。量にかかわらず検出された時点で違反

その他、コハク酸d-α-トコフェロール(2件・フランス産マルチビタミン)・酢酸トコフェロール(1件)など、ビタミンE誘導体として使用されるトコフェロール系化合物も問題となっています。これらは天然ビタミンE(d-α-トコフェロール)とは別の化合物として日本では指定外となります。

8. 製造補助剤・賦形剤系(26件):日本と海外でルールが異なる物質群

錠剤・カプセル・粉末サプリメントの製造に不可欠な賦形剤・滑沢剤・崩壊剤類が、日本の食品添加物規制と合致しないケースが26件記録されています。

物質 件数 主な産地・商品 問題
ラウリル硫酸ナトリウム(SLS) 2件 中国産(2件) 指定外添加物。乳化剤・発泡剤として広く使用されるが日本では指定なし
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC) 1件 アメリカ産 指定外添加物。植物性カプセルの主原料だが日本では指定されていない
ステアリン酸マグネシウム・ケイ酸マグネシウム 1件 韓国産(複合) 指定外添加物(滑沢剤として使用)
ステアリン酸カルシウム 1件 中国産 指定外添加物(錠剤の滑沢剤)
L-アルギニン塩酸塩 1件 アメリカ産 指定外添加物(アミノ酸を塩酸塩の形で添加物使用)
炭酸カルシウム(過剰) 4件 アメリカ産・中国産 カルシウム強化目的での過剰使用。「カルシウムとして19%」など基準値超過
リン酸カルシウム類(過剰) 2件 アメリカ産ビタミン製品 カルシウム強化剤の使用量規制超過(カルシウムとして3.49%→15%使用など)
ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ(NAMPT) 3件 香港産NMN製品(竹宏堂King・Queen・Xport Pro) 指定外添加物(酵素として使用)
アスパラギン酸-1-デカルボキシラーゼ 2件 中国産β-アラニン製品 指定外添加物(酵素として使用)
コリンリン酸塩・ベタイン塩酸塩 1件 アメリカ産マルチビタミン 指定外添加物(B群ビタミン関連化合物)
フィトナジオン(ビタミンK1) 1件 アメリカ産 指定外添加物(ビタミン成分の形態が指定外)
酸化鉄(黒) 1件 中国産プロポリスカプセル 指定外添加物(着色目的でカプセルに使用)
「植物性カプセル(HPMC)」はグレーゾーンではなく指定外:ゼラチン不使用の「植物性カプセル」はHPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)を素材としていますが、日本では食品添加物として指定されていません。日本国内のサプリメントではプルランやゼラチンが使用されることが多いですが、輸入品ではHPMCカプセルが多く、この点での違反リスクがあります。

9. 注目カテゴリー:NMN製品・CBD製品の違反実態

NMN製品(6件:2021〜2025年)

NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)はアンチエイジング系サプリメントとして2020年前後から急速に普及しました。データには2021〜2025年に6件の違反が記録されています。

産地 商品名 違反内容
2021 中国 β-NICOTINAMIDE MONONUCLEOTIDE(化学合成) 指定外添加物:ジクロロメタン使用(NMN精製の抽出溶媒)
2022 香港 竹宏堂 NMN King 指定外添加物:ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ(NAMPT酵素)使用
2022 香港 竹宏堂 NMN Queen 同上
2022 香港 竹宏堂 NMN Xport Pro 同上
2024 中国 NMNH(Reduced β-NMN) 使用基準不適合:二酸化硫黄 14 g/kg 検出(基準値の7倍超)
2025 中国 β-NMN REDUCED FORM DISODIUM SALT(微生物由来) 指定外添加物:Alcohol Dehydrogenase(アルコール脱水素酵素)使用
NMN製品の違反パターンは「製造工程の問題」:
NMN自体の安全性・有効性の問題とは別に、製造工程で使用される①抽出溶媒(ジクロロメタン)②製造補助酵素(NAMPT・アルコール脱水素酵素)③安定剤(二酸化硫黄)が日本では指定外または使用基準超過となっています。「NMN原料として購入」した製品にこれらが含まれていても、原料製造者が開示しないケースがあります。

CBD製品(6件:2020〜2022年)

CBD(カンナビジオール)製品は2020年以降に日本への輸入が急増したカテゴリーです。データには6件の違反が2020〜2022年に集中して記録されています。

産地 商品名 違反内容
2020 アメリカ CBD Softgel(Nanotechnology) 使用基準不適合:ポリソルベート80が25 g/kg超(乳化剤の過剰使用)
2020 アメリカ GRON CBD WATER SOLUBLE ELIXIR 使用基準不適合:ソルビン酸カリウム対象外使用(保存料)
2021 アメリカ Cannabidiol(化学合成) 指定外添加物:メタノール使用(CBD精製溶媒)
2022 アメリカ CBD TINCTURE MUSHROOM UNWIND 1000mg 指定外添加物:ペンタン使用(抽出溶媒)
2022 アメリカ CBD TINCTURE MUSHROOM FOCUS 1000mg 指定外添加物:ペンタン使用(抽出溶媒)
2022 アメリカ CBD WATER SOLUBLE PWD 指定外添加物:ペンタン使用(抽出溶媒)

CBD製品の違反は3パターンに集約されます。①精製工程での有機溶媒(メタノール・ペンタン)残留、②水溶性化するための乳化剤(ポリソルベート80)の過剰使用、③製品安定化のための保存料(ソルビン酸)の対象外使用です。

10. 添加物以外の21件:動物用医薬品・シアン化合物・放射性物質

① 動物用医薬品(7件):ローヤルゼリー製品に集中

動物用医薬品違反7件はすべてローヤルゼリー製品で、2005〜2009年に集中しています。

産地 商品 違反物質
2005 台湾 フリーズドライローヤルゼリーカプセル クロラムフェニコール 0.08 ppm
2006 中国 ローヤルゼリーカプセル(黄・緑・赤) オキシテトラサイクリン 0.03〜0.10 ppm、テトラサイクリン 0.02 ppm
2006 韓国 ローヤルゼリーカプセル クロラムフェニコール 0.049 ppm
2007 アメリカ ローヤルゼリーカプセル クロラムフェニコール 0.029 ppm
2009 中国 スッポンカプセル(SUPPON CAPSULE) エンロフロキサシン 0.03 ppm

ローヤルゼリーは養蜂産物であり、蜂巣の疾病予防に使用された抗生物質(クロラムフェニコール・テトラサイクリン系)が製品に残存するリスクがあります。2009年以降はデータ上の検出がなく、改善が進んだとみられますが、新規輸入先からの製品には引き続き確認が必要です。

② シアン化合物(9件):植物エキス・緑色粉末食品で検出

シアン化合物の9件は「有機緑色系健康食品」「植物エキス」「アマニ(亜麻仁)含有製品」に集中しています。検出値は23〜290 mg/kg(または22〜93 ppm)の範囲です。

商品 産地 検出値
蜂皇宝エクセレント(植物由来) 中国 290 mg/kg
MR.BEE 21(植物由来) 中国 260 mg/kg
ORGANIC EASY MORNINGS(シンガポール) シンガポール 127 mg/kg
ORGANIC GREEN CLEAN(シンガポール) シンガポール 82 mg/kg
LINUMLIFE EXTRACT(亜麻仁エキス) スイス 93 ppm

「ORGANIC」表記の製品でも複数の検出事例があります。シアン化合物はアマニ(亜麻の種子)・杏仁等の植物に天然に含まれるため、これらを原料とする健康食品では特に注意が必要です。

③ 放射性物質(2件)・フェオホルバイド(1件)

ビルベリーエキスが2件(イタリア産340 Bq/kg・アメリカ産190 Bq/kg)で放射性物質(セシウム)基準超過(100 Bq/kg以上)を記録しています。チェルノブイリ事故由来のセシウムが欧州ベリー類に長期残存しているため、欧州産野生ベリーエキス(ビルベリー・ブルーベリー)は放射性物質の確認が必要です。

オーストラリア産健康食品では「総フェオホルバイド量 417 mg%」が検出されました(2020年)。フェオホルバイドはクロロフィルの分解産物で、光過敏症を引き起こす有害物質です。緑藻類・スピルリナ等を原料とする健康食品で発生するリスクがあります。

11. 輸入実務者のためのチェックリスト

✅【全健康食品・サプリメント共通:輸入前確認】

  • サプライヤーに製造工程全体の添加物リスト(原料・溶媒・賦形剤・滑沢剤・崩壊剤・コーティング剤含む)の提出を求める。製品ラベルや成分表だけでは確認できない物質が多数存在する
  • 取得した添加物リストを厚労省「指定添加物リスト」と1物質ずつ照合し、日本での指定状況を確認する
  • 日本の食品添加物として指定されていても「使用できる食品の範囲」を確認する(健康食品が対象外の物質が多い)
  • 輸入する製品が「食品」として輸入するか「医薬品(薬機法)」として輸入するかを事前に確認する(食品として輸入する場合、食品衛生法の添加物規制が全面適用される)

✅【植物エキス・濃縮エキス製品】

  • 抽出工程で使用された溶媒の種類(ヘキサン・メタノール・ジクロロメタン・酢酸エチル・ペンタン等)とその最終製品中の残留量をサプライヤーに確認する
  • 中国産・フランス産植物エキス:サイクラミン酸・二酸化硫黄・ソルビン酸・パラオキシ安息香酸の試験を実施する
  • 亜麻仁(アマニ)・杏仁含有製品:シアン化合物の試験を実施する
  • 欧州産ベリー系エキス(ビルベリー・ブルーベリー):放射性物質(セシウム)の試験を実施する

✅【錠剤・カプセル・粉末サプリメント】

  • カプセル素材(ゼラチン・プルラン・HPMC・デンプン等)の種類を確認する。HPMCカプセルは日本では指定外添加物
  • 滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム・ステアリン酸カルシウム)・崩壊剤・結合剤の日本指定状況を確認する
  • カルシウム強化剤(炭酸カルシウム・リン酸カルシウム)は使用上限値を確認する
  • ビタミン成分のエステル形態(酢酸トコフェロール・コハク酸トコフェロール等)が日本の指定添加物かを確認する

✅【NMN・CBD・新興カテゴリー製品】

  • NMN原料・製品:精製工程の溶媒(ジクロロメタン等)・製造補助酵素(NAMPT・各種脱水素酵素)・安定剤(二酸化硫黄)の確認を必須とする。二酸化硫黄が14 g/kgという高値が記録されており、試験なしでの輸入は危険
  • CBD製品:抽出溶媒(ペンタン・メタノール)・乳化剤(ポリソルベート80:使用量)・保存料(ソルビン酸の対象外使用)の3点を確認する。アメリカ産でも全件が違反事例に挙がっている
  • ローヤルゼリー製品:クロラムフェニコール・テトラサイクリン系抗生物質の試験を実施する(2010年以降の違反記録はないが、新規サプライヤーからの製品は確認が必要)
  • 有機系グリーン粉末(スピルリナ・クロレラ・グリーンフード系):フェオホルバイドの確認を行う
  • 「健康食品は添加物問題」という認識を持つ:他の食品カテゴリーとは異なり、微生物や農薬より添加物が圧倒的に多い(89%)。確認の重点を「製造工程の全添加物リスト」に置くことが効率的です。
  • FDA承認・GMP認証は日本の添加物規制をクリアしない:アメリカ産(41件)で多数の違反が記録されているように、欧米で合法・安全とされている製造補助剤の多くが日本では指定外です。認証の存在は安心材料にはなりません。
  • 「新カテゴリー=試験なし」のリスク:NMN製品・CBD製品は市場に出てから試験体制が整備される前に輸入が急増したカテゴリーです。新しいサプリメントカテゴリーは特に慎重な事前確認が必要です。
  • 自主検査が唯一の発見手段:健康食品の命令検査(2件)はほぼなく、98%以上が自主検査・行政検査・モニタリング検査による発見。命令検査対象でない現在、自主検査が唯一の違反発見手段です。

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【データ出典・参考情報】
・厚生労働省「輸入食品の違反事例」(平成14年〜令和7年)
・厚労省「食品添加物の指定等に関する指針」・指定添加物リスト
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuhin-additives/index.html
・厚労省「食品、添加物等の規格基準」(昭和34年厚生省告示第370号)
・厚労省「輸入食品に対する検査命令の実施」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/yunyu_kanshi/index.html
※本記事の件数・割合はすべて上記データの集計値です。食品添加物の指定状況・使用基準は随時更新されるため、最新情報は厚労省公式サイトをご確認ください。
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