食品衛生法第12条とは|指定外添加物(TBHQ・サイクラミン酸)の輸入違反を解説

この記事でわかること:
①第12条が禁止する「指定外添加物」の実務的な意味
②TBHQ・サイクラミン酸・アゾルビンなど令和6年度の具体的な違反事例
③「海外では合法」でも日本で止まる添加物違反を防ぐための実務チェックポイントの3点です。
第12条違反の本質は「量の問題」ではなく「そもそも使ってはいけない添加物」の問題です。微量でも、輸出国で合法でも、日本の指定リストにない添加物が含まれていれば止まります。

※ 本記事は食品輸入に関わる実務者向けの情報提供を目的としています。個別案件への法令適用については、所轄の検疫所または専門家にご確認ください。

第12条の条文と実務的な読み方

第12条
人の健康を損なうおそれのない場合として厚生労働大臣が定める場合を除き、添加物(天然香料および一般に食品として飲食に供されている物であって添加物として使用されるものを除く)ならびにこれを含む製剤および食品は、これを販売し、または販売の用に供するために製造し、輸入し、加工し、使用し、貯蔵し、もしくは陳列してはならない
実務的な意味
厚生労働大臣が指定した添加物以外は、原則として使用禁止(ポジティブリスト方式)。「微量だから大丈夫」「輸出国では合法」は通用しない。日本の指定リストに載っていない添加物は量にかかわらず違反
第11条との違い
第11条は「指定された添加物の使用基準(量・対象食品)の超過」。第12条は「そもそも日本で指定されていない添加物の使用」。根拠条文は異なるが、いずれも輸入者が輸入前に添加物リストを照合することで防げる違反

輸入実務での読み方:第12条違反を防ぐ唯一の方法は「輸入前の添加物照合」です。輸入する食品に使われているすべての添加物(キャリーオーバーを含む)が日本の指定リストに載っているかを確認します。海外ラベルのE番号・INS番号を日本名に変換し、厚労省の指定添加物リストと照合する作業が必要です。

なぜ第12条違反が起きるのか

01
各国で使える添加物のリストが異なる

EU・米国・中国・東南アジア各国でそれぞれ独自の添加物規制があります。日本の指定リストは約470種類(2024年時点)ですが、EUや米国では日本未指定の添加物が多数使用されています。輸出国の食品製造者が日本向け特別仕様を作らず、通常仕様のまま輸出するとこの違反が起きます。

02
キャリーオーバーの見落とし

キャリーオーバーとは、原材料に使われた添加物が最終製品にも微量残存することです。原材料の時点では問題なくても、加工食品になった時点で未指定添加物が「含まれている」状態になります。成分表示に記載されない場合でも、実態として含まれていれば違反になります。

03
OEM・PB品は製造委託先の管理が及びにくい

海外の製造委託先がレシピや原材料を変更した場合、輸入者が気づかないうちに未指定添加物が使われているケースがあります。定期的な成分確認と、製造委託先への変更時の事前通知義務付けが有効です。

違反事例データ(23年分・約220件)

指定外添加物の主な違反物質

物質名 用途(輸出国での使われ方) 代表的な事例 多い食品
TBHQ(tertiary butylhydroquinone) 酸化防止剤(油脂の酸化を防ぐ) 中国 TIANJIN LONGKANG FOODS CO., LTD.(令和6年度):TBHQ 0.001 g/kg検出。微量でも日本未指定のため違反。 即席麺・スナック菓子・油脂加工品
サイクラミン酸(チクロ) 甘味料(砂糖の30〜50倍の甘味) 令和6年度の代表的な違反物質として厚労省が公表。EUの一部・アジア・中南米では合法。日本では1969年に使用禁止。 清涼飲料水・菓子・デザート類
アゾルビン(カルモイシン) 着色料(赤色) 令和6年度の違反リストに記載。EUでは認可(E122)、日本では未指定。 菓子・清涼飲料・ゼリー類
塩化メチレン(ジクロロメタン) 抽出溶剤(カフェイン除去等) 令和6年度の違反リストに記載。カフェインレスコーヒー・ホップエキスの製造に使用。日本では食品への使用不可。 カフェインレスコーヒー・ホップ製品
カルミン酸アルミニウムレーキ 着色料(赤色・コチニール色素の処理形態) 令和6年度の違反リストに記載。カルミン酸自体は日本で指定されているが、「レーキ」形態は未指定。 菓子・化粧品(食品添加物として)

国別の傾向

国・地域 主な違反物質 多い食品カテゴリ
中国 TBHQ、その他指定外酸化防止剤・保存料 即席食品、スナック菓子、油脂加工品
東南アジア(タイ・ベトナム・マレーシア等) サイクラミン酸、アゾルビン系着色料 清涼飲料水、菓子類、デザート
EU・欧州 アゾルビン、塩化メチレン、カルミン酸レーキ 加工食品、飲料、コーヒー製品
中南米・アフリカ サイクラミン酸(使用が認められている地域) 清涼飲料水、菓子類

第11条・第12条の違反の見分け方

第12条違反
「日本の指定リストに載っていない添加物が含まれている」→ TBHQ、サイクラミン酸など。量は関係ない。
第11条違反
「日本で指定されている添加物だが、使用基準(量・対象食品)を超えている」→ 二酸化硫黄超過、ソルビン酸の対象外使用など。

輸入前の実務チェックポイント

01
全添加物のリストを入手し、日本の指定リストと照合する

輸入する食品に使われているすべての添加物(表示されているものだけでなく、キャリーオーバーを含む)のリストを仕入先から入手します。次に、厚労省の「指定添加物リスト」「既存添加物名簿」と照合し、日本で使用できるものかを1品目ずつ確認します。E番号・INS番号がある場合は日本名への変換が必要です。

02
「微量だから大丈夫」は通じないと認識する

TBHQの事例(0.001 g/kg)が示すように、日本未指定の添加物は検出されれば量にかかわらず違反です。「検出限界以下だろう」という判断は輸入者側ではできません。未指定添加物の使用を事前に排除することが唯一の対策です。

03
OEM・PB品は原材料変更時に必ず再確認する

製造委託先が原材料・添加物のサプライヤーを変更した場合、新しい原材料に未指定添加物が含まれている可能性があります。製造委託契約に「原材料・添加物変更時の事前通知義務」を盛り込み、変更があるたびに日本基準との照合をやり直す体制を作ることを推奨します。

04
同一物質でも「形態」が違えば別扱いになる

カルミン酸アルミニウムレーキの事例が典型です。「カルミン酸」は日本で指定されていますが、「カルミン酸アルミニウムレーキ」(顔料形態)は未指定です。同じ素材由来でも処理形態・化学形態が異なれば別の添加物として扱われます。物質名だけでなく「形態」まで照合することが重要です。

添加物照合の実務手順

ステップ 作業内容 参照先
① 全添加物リスト入手 仕入先から使用全添加物(キャリーオーバー含む)のリストを書面で入手 仕入先への書面要求
② E番号・INS番号の変換 海外表記(E番号・INS番号)を日本の物質名に変換 コーデックス委員会INS番号表、各国添加物規制資料
③ 指定リストとの照合 日本の指定添加物リスト・既存添加物名簿と1品目ずつ照合 厚労省「指定添加物リスト」「既存添加物名簿」
④ 不明物質の確認 照合で判断できない物質は所轄の検疫所または専門家に確認 所轄の検疫所・食品衛生の専門家
⑤ 定期的な再確認 原材料・配合変更時・仕入先変更時に①〜④を繰り返す 製造委託契約への変更通知条項の組み込み

関連する条文

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よくある質問

日本で使用できる添加物のリストはどこで確認できますか?

厚生労働省が公表している「指定添加物リスト」および「既存添加物名簿」で確認できます。指定添加物は厚労省が安全性を確認して指定したもの、既存添加物は長年使用実績があり届出制で使用できるものです。どちらにも記載されていない添加物は、天然香料・一般飲食物添加物の例外を除き、原則として使用できません。厚労省のウェブサイトからPDF形式で入手できます。

TBHQはなぜ日本で禁止されているのですか?

TBHQは米国・EU・中国などで酸化防止剤として認可されていますが、日本では厚生労働大臣による指定を受けていないため使用できません。日本の添加物制度はポジティブリスト方式のため、指定されていない添加物は安全性の有無にかかわらず使用が禁止されます。日本への輸入を前提とした食品にTBHQを使用する場合は、日本向け仕様として別途製造する必要があります。

キャリーオーバーとは何ですか?どう対処すればいいですか?

キャリーオーバーとは、原材料の製造段階で使われた添加物が最終製品にも微量残存することです。たとえば、未指定添加物を含む植物油を原材料として使用した加工食品には、その添加物がキャリーオーバーとして含まれることがあります。対処するには、原材料ごとの添加物使用リストを仕入先から入手し、原材料の段階まで遡って確認することが必要です。成分表示に記載されない場合でも実態として含まれていれば違反になります。

第12条と第11条、どちらに違反しているか輸入前に確認する方法は?

2段階で確認します。まず①日本の指定添加物リスト・既存添加物名簿で「その添加物が日本で指定されているか」を確認します(第12条の問題)。指定されていれば、②厚労省の使用基準(量・対象食品)と照合して「使用基準の範囲内か」を確認します(第11条の問題)。どちらかに引っかかれば輸入できません。不明な物質は所轄の検疫所に事前確認することを推奨します。

参考リソース

情報の正確性には最善を尽くしていますが、法令の改正・条文解釈の変更がある場合があります。最新情報は厚生労働省の公式資料または所轄の検疫所にご確認ください。最終更新:2026年3月|運営:Hunade(hunade.com)

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