この記事でわかること:
①第11条が輸入食品で最多違反になる理由、
②23年分のデータから見る違反パターン(国別・品目別)、
③輸入前に確認すべき実務チェックポイントの3点です。
法的解釈ではなく、貿易実務者が現場で使える観点に絞って解説します。
※ 本記事は食品輸入に関わる実務者向けの情報提供を目的としています。個別案件への法令適用については、所轄の検疫所または専門家にご確認ください。
第11条の条文と実務的な読み方
厚生労働大臣は、公衆衛生の見地から、食品、添加物、器具又は容器包装について規格を定め、又はその製造、加工、使用、調理若しくは保存の方法につき基準を定めることができる(食品衛生法第13条が現行の規格基準を規定。旧法の第11条に相当)
食品に残存する添加物について、食品ごとに残留基準が定められており、基準を超える場合は販売等が禁止される
農薬・動物用医薬品・飼料添加物については「ポジティブリスト制度」が適用され、基準値が設定されていない農薬等が一定量以上残留する食品は販売禁止(一律基準:0.01 ppm)
輸入実務での読み方:第11条違反の本質は「日本が認めた範囲を超えているか」という1点です。食品そのものが腐敗しているわけでも、明らかに危険なわけでもなくても、日本の基準値を0.001 ppmでも超えれば止まります。「輸出国で問題なく流通していた」「量が少ないから大丈夫」は通用しません。
なぜ輸入食品で第11条違反が最多なのか
23年分のデータで第11条系(第11条・第2項・第3項の合計)は約10,500件と、全違反の約半数を占めます。その背景には3つの構造的な理由があります。
国ごとに基準が異なる
EUやアメリカで合法な添加物・農薬でも、日本の指定リストや残留基準に合わないケースが多い。輸出側は自国基準で製造しているため、意図せず違反になる。
用途・対象食品まで細かく制限
日本の添加物規制は「使ってよい食品の種類」まで指定している。ある食品には許可されている添加物でも、別の食品に使うと違反になる。この「用途外使用」が見落とされやすい。
ポジティブリストの一律基準
2006年施行のポジティブリスト制度では、基準値が設定されていない農薬は「0.01 ppm」という極めて厳しい一律基準が適用される。輸出国で通常の農業管理をしていても超過するケースがある。
違反事例データ(23年分・約10,500件)
違反の4パターン
| 違反パターン | 頻度 | 代表的な物質・事例 | 多い食品 |
|---|---|---|---|
| 添加物の用途外使用 | ★★★★★ | 酢酸エチル(イタリア製コーヒー)、ソルビン酸(ベルギー製加工品)、安息香酸(ブラジル産トマトソース) | 加工食品全般、飲料、調味品 |
| 二酸化硫黄・ピロ亜硫酸Na | ★★★★ | 米国Diamond Bakery製品(ピロ亜硫酸Na 0.060 g/kg)。乾燥・漂白工程での使用が多い | 乾燥果実、干しぶどう、ワイン |
| 農薬残留超過(第11条第3項) | ★★★★ | カカオ豆への2,4-D検出が複数年継続。エクアドル0.02 ppm(2016)、ベネズエラ0.03 ppm・ガーナ0.05 ppm(2018) | カカオ豆、野菜、豆類 |
| 成分規格不適合(第11条第2項) | ★★★ | 食品の成分(水分・灰分・添加物残留値など)が日本規格を超過 | 水産加工品、乳製品、穀物加工品 |
国別の傾向
違反件数が多い国は、輸入量が多い国と概ね一致します。ただし「同じ品目で同じ違反が複数年繰り返されている」国・品目の組み合わせは要注意です。繰り返し違反は命令検査(以降の全輸入品が検査対象)に移行するリスクが高まります。
| 国・地域 | 主な違反内容 | 多い食品カテゴリ |
|---|---|---|
| 中国 | 農薬残留、添加物残留、成分規格不適合 | 野菜・果実、冷凍食品、加工食品 |
| 米国 | 二酸化硫黄、添加物の用途外使用 | 乾燥果実、菓子類、加工食品 |
| イタリア・欧州 | 酢酸エチル等の溶剤・添加物の用途外使用 | コーヒー、加工食品、飲料 |
| ブラジル・南米 | 安息香酸、ソルビン酸の対象外使用 | トマト加工品、果実加工品 |
| エクアドル・ガーナ・ベネズエラ | 農薬残留(2,4-D)の繰り返し違反 | カカオ豆 |
品目別の傾向
| 食品カテゴリ | 典型的な違反物質 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 乾燥果実・ドライフルーツ | 二酸化硫黄(色保持目的) | 乾燥工程で自然生成されることもあり、産地の製造条件まで確認が必要 |
| 加工食品・調味品 | ソルビン酸、安息香酸、酢酸エチルの用途外使用 | 海外ラベルのE番号・INS番号を日本名に変換してリスト照合が必要 |
| カカオ豆・スパイス | 農薬残留(2,4-D、クロルピリホス等) | 産地の栽培慣行と日本MRLのギャップを農薬名ごとに確認。同一産地での再発が多い |
| 水産加工品・乳製品 | 添加物残留、成分規格不適合 | 輸出国の製品規格と日本の成分規格の差異を事前確認 |
輸入前の実務チェックポイント
添加物の照合は「名称+用途+対象食品」の3点セット
海外ラベルのE番号・INS番号を日本の添加物データベース(厚労省「食品添加物の指定等に関する資料」)で照合するとき、「日本で指定されているか」だけでなく「その食品への使用が認められているか」まで確認する必要があります。指定されていても用途・対象食品が異なれば違反です。
農薬残留は「輸出国の許可」ではなく「日本のMRL」で判定
農林水産省・厚労省が公表している「農薬残留基準値一覧」で、対象農産物ごとの残留限界値(MRL)を確認します。基準値が設定されていない農薬は一律0.01 ppmが適用されます。輸出国で合法に使用されている農薬でも、日本のMRLを超えれば違反です。
繰り返し違反の品目は履歴を事前に確認
カカオ豆の2,4-D違反のように、同一国・同一品目で違反が複数年続いているケースは命令検査への移行リスクが高い。当サイトのデータベースや厚労省の公表資料で、過去の違反履歴を確認してから仕入先選定を行うことを推奨します。
乾燥果実は製造条件まで確認
二酸化硫黄は乾燥・漂白工程で意図的に使用される場合と、発酵・酸化防止の過程で自然生成される場合の両方があります。産地証明や成分表示だけでなく、乾燥方法・処理条件の確認、および輸入前の自主検査(日本の検査機関での分析)が実質的に必要です。
自主検査のタイミングと対象物質の目安
| 食品カテゴリ | 優先して検査すべき物質 | 検査タイミング |
|---|---|---|
| 乾燥果実(干しぶどう、あんず等) | 二酸化硫黄 | 初回輸入時・サプライヤー変更時・ロット変更時 |
| カカオ豆・コーヒー豆 | 2,4-D、クロルピリホス等の農薬 | 産地・収穫年ごと(継続的に確認) |
| 加工食品・調味品(輸入OEM含む) | 全添加物の種類・用途照合 | 初回輸入前に成分全量確認。配合変更時も再確認 |
| 水産加工品 | 添加物残留、成分規格値 | 製造工場変更時・製品規格変更時 |
関連する条文
第12条(指定外添加物)
日本で指定されていない添加物を使用した場合の根拠条文。第11条が「使用基準の超過」なら、第12条は「そもそも使ってはいけない添加物」の違反です。TBHQやサイクラミン酸などが代表例。
第13条(規格基準)
現行法では食品の成分規格・製造基準の中心は第13条に整理されています。年度によって第11条と第13条のどちらに記載されるかが変わる条文です。微生物規格はほぼ第13条第2項に集約されています。
よくある質問
厚生労働省の公表資料は年度によって条番号の体系が異なります。古い年度の資料では「第11条」が添加物・残留基準の中心として記載され、近年の資料では「第13条」側に整理されている傾向があります。実務上は条番号ではなく、違反の中身(添加物の用途外使用なのか、農薬残留なのか、微生物規格なのか)で確認することが重要です。
2006年5月に施行された農薬等の残留基準制度です。それ以前は「規制する農薬のリスト(ネガティブリスト)」で管理していましたが、ポジティブリスト制度では「使用を認める農薬と残留基準値のリスト」で管理します。リストに載っていない農薬については、食品の種類を問わず0.01 ppmという一律基準が適用されます。この基準は極めて厳しく、輸出国で問題なく使用されている農薬でも引っかかるケースがあります。
厚生労働省が公表している「食品添加物の指定等に関する資料」および「既存添加物名簿」で確認できます。E番号(EU表記)やINS番号(コーデックス委員会の国際番号)から日本の物質名への対応表は、輸入食品の添加物照合で実務的によく使われます。照合に迷う場合は、輸入届出を行う前に所轄の検疫所に相談することを推奨します。
検疫所から通知を受けた後、積み戻し(輸出国へ返送)または廃棄の選択となります。いずれも費用は輸入者負担です。また、同一国・同一品目での違反が繰り返されると、以降の輸入が「命令検査」の対象となり、全件検査が義務付けられます。具体的な手続きは所轄の検疫所の指示に従ってください。
参考リソース
情報の正確性には最善を尽くしていますが、法令の改正・条文解釈の変更がある場合があります。最新情報は厚生労働省の公式資料または所轄の検疫所にご確認ください。最終更新:2026年3月|運営:Hunade(hunade.com)
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