この記事でわかること:
①第18条が規定する器具・容器包装の規格基準の実務的な意味、
②陶磁器・ガラスの鉛溶出を中心とした23年分・約1,100件の違反パターン、
③「食品ではなく接触資材」で止まる違反を防ぐための実務チェックポイントの3点です。
第18条違反の特徴は、食品本体ではなく食器・容器・包装材という「食品に触れるもの」の問題で止まる点です。食品の安全性だけを確認していると見落としやすい類型です。
※ 本記事は食品輸入に関わる実務者向けの情報提供を目的としています。個別案件への法令適用については、所轄の検疫所または専門家にご確認ください。
第18条の条文と実務的な読み方
厚生労働大臣は、公衆衛生の見地から、器具または容器包装について規格を定め、またはその製造方法について基準を定めることができる。規格または基準に合わない器具・容器包装の販売・製造・輸入等を禁止する
規格または基準に合わない器具・容器包装を使用した食品の販売等も禁止。材質別(ガラス・陶磁器・金属・合成樹脂等)に溶出規格・材質規格が定められており、鉛・カドミウムの溶出量が主な違反要因。件数540件
輸入実務での読み方:第18条は「食品に直接触れる器具・容器・包装材」の安全性を規定します。食器・コップ・調理器具・食品用プラスチック容器・包装フィルムなどが対象です。食品そのものを輸入するときも、食品に接触する容器や包装材が日本の溶出規格を満たしていなければ輸入できません。「食器だから食品衛生法は関係ない」は誤りで、食器類も食品衛生法の規制対象です。
なぜ輸入器具・容器包装で第18条違反が多いのか
釉薬・顔料の成分が国によって異なる
陶磁器・ガラスの着色や表面処理に使われる釉薬・顔料には鉛・カドミウムが含まれる場合があります。輸出国では流通している製品でも、日本の溶出試験(酢酸溶液に浸漬して溶出する金属量を測定)で基準値を超えるケースがあります。デザイン重視の製品ほど着色剤の使用量が多く、リスクが高い傾向があります。
日本の溶出規格は国際基準より厳しい項目がある
日本の器具・容器包装の規格基準(食品衛生法に基づく告示)はEU・米国基準と内容が異なる部分があります。輸出国の検査を通過した製品が日本基準では不適合となるケースがあります。特に陶磁器の鉛溶出基準は品目・形状によって細かく分類されています。
食品輸入者が接触資材を見落としやすい
食品を輸入する際、食品本体の成分・添加物の確認に集中しがちで、食品が入っている容器・包装材の規格確認が後回しになるケースがあります。また食器類(皿・カップ等)を輸入する際に「雑貨だから食品衛生法は関係ない」と誤解しているケースもあります。
違反事例データ(23年分・約1,100件)
違反パターン別の整理
| 違反パターン | 根拠 | 代表的な事例 | 多い品目 |
|---|---|---|---|
| 陶磁器からの鉛溶出 | 第18条第2項 | スペイン IVANROS CERAMICAS S.L.(2024年5月):鉛 不適。メキシコ SANTA JET(2018年2月):鉛 4 μg/ml。フランス MAISONS DU SUD(2020年度):鉛 31 μg/cm²。ドイツ製品(2017年):鉛 不適合。 | 皿・カップ・ボウル・タイル |
| ガラス製品からの鉛・カドミウム溶出 | 第18条第2項 | 着色ガラスのコップ・花瓶などで鉛・カドミウムの溶出超過。クリスタルガラスは特にリスクが高い。 | グラス・コップ・ガラス食器 |
| プラスチック容器の規格違反 | 第18条 | 蒸発残留物・重金属・過マンガン酸カリウム消費量などの溶出規格超過。材質によって試験方法・基準値が異なる。 | 食品用プラスチック容器・弁当箱・包装フィルム |
| 金属製器具の規格違反 | 第18条 | 鉛・カドミウム・ヒ素・アンチモンなどの溶出超過。めっき処理や合金素材由来のケースが多い。 | 金属製調理器具・缶・容器 |
国別の傾向
| 国・地域 | 主な違反内容 | 多い品目 |
|---|---|---|
| 中国 | 陶磁器・プラスチック容器の鉛溶出・規格違反 | 陶器・磁器食器、プラスチック容器 |
| スペイン・イタリア・欧州 | 陶磁器(タイル・食器)の鉛溶出 | 装飾性の高い陶磁器食器・タイル |
| メキシコ・中南米 | 陶磁器の鉛溶出(伝統的な釉薬の使用) | 伝統工芸陶器・食器 |
| フランス・ドイツ | 陶磁器・ガラス製品の鉛溶出 | 高級食器・クリスタルガラス |
品目別の傾向
| 品目 | 典型的な違反内容 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 陶磁器食器(皿・カップ等) | 鉛・カドミウム溶出 | 釉薬・顔料・焼成温度が溶出量に直結。輸出国の安全証明だけでなく日本基準での溶出試験成績が必要 |
| ガラス食器(グラス・ボウル等) | 鉛・カドミウム溶出(着色ガラス・クリスタル) | 無色透明ガラスより着色ガラス・クリスタルガラスのリスクが高い。素材の組成確認が重要 |
| 食品用プラスチック容器 | 蒸発残留物・重金属・可塑剤の溶出 | 材質(PE・PP・PET等)ごとに試験方法が異なる。日本の検査機関での材質確認と溶出試験が推奨 |
| 食品包装フィルム・袋 | 蒸発残留物・印刷インクの溶出 | 印刷面が食品に接触する場合は特に注意。食品接触面への印刷インクの使用制限あり |
輸入前の実務チェックポイント
「食器・容器も食品衛生法の対象」と認識する
食器・調理器具・食品用容器・包装材はすべて食品衛生法第18条の規制対象です。輸入届出(食品等輸入届出書)の提出が必要なものと、届出不要でも規格に適合させる必要があるものがあります。初めて輸入する品目については、届出の要否を含めて事前に検疫所に確認することを推奨します。
日本の検査機関による溶出試験成績書を取得する
輸出国の検査証明書だけでは不十分です。日本の食品衛生法に基づく試験方法(告示に定める試験法)で実施した溶出試験の成績書が必要です。JFRL(日本食品分析センター)・BOKEN(ボーケン品質評価機構)・SGS・BVなど、日本の規格で試験できる機関に依頼することを推奨します。
釉薬・顔料・材質の仕様書を仕入先から入手する
陶磁器・ガラス製品は釉薬・顔料の組成が鉛・カドミウム溶出量に直結します。仕入先から材質・釉薬・顔料の仕様書(コンポジション)を入手し、鉛・カドミウムを含む成分が使用されていないか確認します。デザイン変更時・製造ロット変更時も再確認が必要です。
食品と同梱する包装材も確認対象に含める
食品を輸入する場合、食品本体の確認だけでなく、食品に直接接触する容器・包装材(袋・トレー・ラップ等)の規格適合も確認が必要です。特に輸入食品の容器が食品と一体で輸入される場合、容器の溶出規格違反で食品ごと止まるリスクがあります。
試験・確認の目安
| 品目 | 確認すべき試験項目 | 確認タイミング |
|---|---|---|
| 陶磁器食器 | 鉛・カドミウム溶出試験(日本規格準拠) | 初回輸入時・釉薬・顔料・製造ロット変更時 |
| ガラス食器・クリスタル | 鉛・カドミウム溶出試験 | 初回輸入時・ガラス素材・着色剤変更時 |
| 食品用プラスチック容器 | 蒸発残留物・重金属・材質試験(材質ごとに異なる) | 初回輸入時・材質・製造工場変更時 |
| 食品包装フィルム・袋 | 蒸発残留物・溶出試験(食品接触面) | 初回輸入時・フィルム素材・印刷仕様変更時 |
関連する条文
第10条(証明書・輸入禁止規定)
第18条が「食品本体ではなく接触資材の問題で止まる」のと同様に、第10条は「食品本体ではなく書類の問題で止まる」類型です。両条文とも食品の安全性とは別の次元で確認が必要です。食肉を輸入する場合は衛生証明書(第10条)、食器類を輸入する場合は溶出試験成績書(第18条)という具合に、品目に応じた事前準備が必要です。
第6条(有害物質・腐敗)
食品そのものに重金属(鉛・カドミウム等)が含まれている場合は第6条第2号の有害物質として処理されます。第18条は「器具・容器から食品への溶出」を問題にするのに対し、第6条は「食品自体に含まれる有害物質」を問題にします。根拠条文は異なりますが、最終的な消費者リスクは同じ方向性です。
よくある質問
食品に直接接触する食器・調理器具・容器包装は食品衛生法の規制対象です。輸入届出(食品等輸入届出書)の提出が必要な品目と不要な品目があり、品目・用途によって異なります。届出が不要な場合でも、規格基準への適合は義務です。輸入する品目の届出要否は所轄の検疫所に確認することを推奨します。
日本の陶磁器の鉛溶出基準は、器の形状・容量によって異なります(平皿・深皿・カップ等で基準値が分類されています)。詳細な基準値は厚生労働省が定める「食品、添加物等の規格基準」で確認できます。具体的な数値については厚労省の公式資料または所轄の検疫所でご確認ください。
厚生労働省が定める「食品、添加物等の規格基準」(昭和34年厚生省告示第370号およびその改正)に、材質別(合成樹脂・ゴム・金属・ガラス・陶磁器等)の規格が定められています。材質によって試験方法・基準値が異なるため、輸入する容器の材質を特定した上で該当する規格を確認する必要があります。
米国FDA基準やEU(CE)基準への適合は、日本の食品衛生法上の規格適合を保証しません。日本独自の試験方法・基準値での確認が必要です。輸出国の認証を持っていても、日本の検疫所での検査で不適合となるケースがあります。日本向け輸入品については、日本の食品衛生法に基づく試験を改めて実施することを推奨します。
参考リソース
情報の正確性には最善を尽くしていますが、法令の改正・条文解釈の変更がある場合があります。最新情報は厚生労働省の公式資料または所轄の検疫所にご確認ください。最終更新:2026年3月|運営:Hunade(hunade.com)
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