この記事でわかること:
①第13条が規定する「規格基準」の実務的な意味、
②微生物規格・残留農薬を中心とした23年分・約2,200件の違反パターン、
③製造工場・残留農薬の両面から防ぐための実務チェックポイントの3点です。
第13条は現行法で規格基準違反の中心を担う条文ですが、年度によって第11条との記載分担が変わるため、条番号より「違反の中身」で理解することが重要です。
※ 本記事は食品輸入に関わる実務者向けの情報提供を目的としています。個別案件への法令適用については、所轄の検疫所または専門家にご確認ください。
第13条の条文と実務的な読み方
厚生労働大臣は、食品、添加物、器具または容器包装について、公衆衛生上の見地から規格を定め、またはその製造・加工・使用・調理・保存の方法について基準を定めることができる(現行法の規格基準の根拠条文)
前項の規格に合わない食品・添加物の販売等を禁止。微生物規格(細菌数・大腸菌群・E.coli等)、成分規格(水分・灰分等)、添加物の残留基準など広範な規格違反がここに集まる。件数:1,679件
農薬・動物用医薬品・飼料添加物について、残留基準を超える食品の販売等を禁止。ポジティブリスト制度による残留農薬規制の現行法上の根拠。件数:580件
年度による条番号の違いに注意:厚労省が公表する違反事例は年度によって「第11条」と「第13条」の記載分担が変わります。古い年度の資料では残留基準・成分規格違反の多くが第11条として出てきますが、近年の資料では同じ内容が第13条側に整理される傾向があります。データを読み解くときは条番号だけでなく、違反の中身(微生物か、農薬残留か、添加物か)を確認することが重要です。
なぜ輸入食品で第13条違反が多いのか
製造・衛生管理の基準が国によって異なる
日本の食品成分規格(特に微生物規格)は、輸出国の基準より厳しいケースがあります。輸出国で合格した製品でも、日本の細菌数規格・E.coli基準を超過することがあります。製造工場が日本向け規格を把握していないまま製造しているケースも多いです。
冷凍・加工工程での微生物管理が難しい
冷凍野菜・水産加工品は加熱→冷却→包装の各工程で微生物汚染のリスクがあります。加熱が不十分、冷却が遅い、包装後の保管温度が不安定といった工程上の問題が微生物規格不適合につながります。原料の品質だけでなく製造工程全体の管理が問われます。
農薬は「産地の栽培慣行」と「日本MRL」のギャップ
第13条第3項の農薬残留違反(ポジティブリスト)は、輸出国で合法に使われている農薬でも日本基準を超えることで発生します。同じ産地・同じ栽培慣行である限り、仕入先を変えても再発しやすい構造的な問題です。
違反事例データ(23年分・約2,200件)
違反パターン別の整理
| 違反パターン | 根拠 | 代表的な事例 | 多い食品 |
|---|---|---|---|
| 微生物規格不適合(細菌数・E.coli) | 第13条第2項 | パキスタン SIX B FOOD INDUSTRIES(2025年度):冷凍混合野菜 細菌数 1.2×10⁷/g・E.coli陽性。ベトナム GIMEX VIETNAM(2024年2月):細菌規格不適合。 | 冷凍野菜、水産加工品、乳製品 |
| 残留農薬超過(第13条第3項) | 第13条第3項 | メキシコ産アボカド(農薬残留)。中国産えだまめ(令和2年9月)。中国産冷凍しいたけ(令和4年5月)。 | 野菜・果実、豆類、きのこ類 |
| 成分規格不適合 | 第13条第2項 | 水分値・灰分値・Aw(水分活性)などの成分規格超過。輸出国仕様と日本規格の差異が原因。 | 水産加工品、乳製品、穀物加工品 |
| 動物用医薬品残留 | 第13条第3項 | 抗生物質・抗菌剤の残留。養殖水産物・畜産物で発生。使用制限のある薬剤が輸出国では認可されているケース。 | 養殖エビ・魚、食肉 |
国別の傾向
| 国・地域 | 主な違反内容 | 多い食品カテゴリ |
|---|---|---|
| 中国 | 残留農薬超過(えだまめ・冷凍しいたけ等)、微生物規格不適合 | 冷凍野菜・きのこ類、水産加工品 |
| ベトナム | 微生物規格不適合(細菌数・E.coli) | 冷凍野菜、水産加工品 |
| パキスタン | 微生物規格不適合(冷凍野菜) | 冷凍混合野菜 |
| メキシコ | 残留農薬超過(アボカド等) | 生鮮野菜・果実 |
| 東南アジア全般 | 動物用医薬品残留(養殖水産物) | 養殖エビ、養殖魚 |
品目別の傾向
| 食品カテゴリ | 典型的な違反内容 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 冷凍野菜 | 細菌数超過、E.coli陽性 | 製造工場の加熱条件・冷却速度・衛生管理が直接影響。GMP・HACCP認証の確認が重要 |
| 養殖水産物(エビ・魚) | 動物用医薬品残留(抗生物質等) | 養殖場での使用薬剤リストと日本の残留基準の照合。休薬期間の遵守確認 |
| 野菜・果実(生鮮・冷凍) | 残留農薬超過(第13条第3項) | 産地の栽培慣行と日本MRLのギャップ確認。同一産地からの再発が多いため履歴確認が重要 |
| 水産加工品・乳製品 | 成分規格不適合(水分・灰分等) | 輸出国の製品規格と日本の成分規格を項目ごとに照合 |
輸入前の実務チェックポイント
製造工場の衛生管理資料を入手・確認する
微生物規格違反は製造工程の衛生管理に起因するものがほとんどです。工場のGMP(適正製造規範)認証やHACCP認証の取得状況、衛生管理マニュアル、過去の自主検査記録を輸入前に入手して確認します。書類上の認証だけでなく、現場の運用実態を把握することが重要です。
加熱・冷却・包装の各工程条件を確認する
冷凍野菜・水産加工品では「加熱温度と時間」「冷却速度」「包装後の保管温度」が微生物規格に直結します。製造仕様書(スペックシート)に加熱条件・冷却条件が明記されているか確認し、日本向け出荷品が規格通りに製造されていることを書類で確認します。
農薬は産地慣行と日本MRLの差を農薬名ごとに確認
「その国で使ってよい農薬か」ではなく「日本の残留基準(MRL)に合うか」が判定基準です。仕入先から栽培で使用した農薬の全リストを入手し、厚労省の農薬残留基準値(ポジティブリスト)と照合します。基準値が設定されていない農薬は一律0.01 ppmが適用されます。
同一産地・同一農薬の再発リスクを意識する
中国産えだまめ・冷凍しいたけ、メキシコ産アボカドのように、同一産地・同一食品での農薬残留違反が複数年にわたって繰り返されるケースがあります。仕入先を変えても同じ産地・同じ栽培慣行であれば再発リスクは変わりません。違反履歴の確認と定期的な自主検査が有効です。
自主検査の目安
| 食品カテゴリ | 優先して検査すべき項目 | 検査タイミング |
|---|---|---|
| 冷凍野菜・水産加工品 | 一般細菌数、大腸菌群、E.coli | 初回輸入時・製造工場変更時・製造ロット変更時 |
| 養殖エビ・養殖魚 | 動物用医薬品残留(使用薬剤に応じた項目) | 養殖場・生産者変更時・定期的に抽出確認 |
| 生鮮・冷凍野菜(農薬懸念品目) | 使用農薬に応じた残留農薬多項目分析 | 産地・収穫シーズンごとに実施 |
| 水産加工品・乳製品 | 成分規格値(水分・灰分・添加物残留) | 製品規格変更時・製造委託先変更時 |
関連する条文
第11条(添加物・残留基準)
年度によって第11条と第13条のどちらに記載されるかが変わる関係にあります。添加物の使用基準・残留基準・農薬残留基準は、古い資料では第11条、近年の資料では第13条として出ることが多いです。違反の中身(添加物か農薬か微生物か)で判断することが実務上は重要です。
第6条(有害物質・腐敗)
微生物汚染(細菌数超過・E.coli陽性)は第13条第2項、食品の腐敗・変質は第6条第1号、アフラトキシン等の有害物質は第6条第2号というように、「微生物の問題」でも根拠条文が異なります。検疫所からの通知文で条文番号を確認することが重要です。
よくある質問
実務上は条番号よりも「違反の中身」で確認することを推奨します。微生物規格(細菌数・E.coli等)の問題なら製造工場の衛生管理、残留農薬の問題なら日本のMRL(農薬残留基準値)との照合、添加物の問題なら日本の指定リストとの照合が対応すべき事項です。厚労省の公表資料は年度によって同じ違反内容でも第11条・第13条どちらに記載されるかが変わるため、条番号で判断すると混乱することがあります。
厚生労働省が定める「食品、添加物等の規格基準」(昭和34年厚生省告示第370号およびその改正)に食品ごとの成分規格が定められています。冷凍食品については細菌数・大腸菌群・E.coliなどの基準が品目ごとに設定されています。詳細は厚労省の公式資料または輸入届出を行う所轄の検疫所でご確認ください。
養殖水産物(エビ・魚類)と食肉で特に多い違反です。養殖場で使用された抗生物質・抗菌剤が休薬期間を経ずに出荷された場合、日本の残留基準を超えることがあります。輸出国では認可されている薬剤でも日本では使用が制限されているケースがあるため、仕入先の養殖場で使用している薬剤の全リストと日本の基準を照合することが推奨されます。
命令検査の対象品目は厚労省が随時更新しています。現在の対象品目・対象国の最新情報は、厚労省の「輸入食品監視業務」ページまたは輸入届出を行う検疫所で確認してください。命令検査の指定・解除は違反状況によって変わるため、輸入前に必ず最新情報を確認することを推奨します。
参考リソース
情報の正確性には最善を尽くしていますが、法令の改正・条文解釈の変更がある場合があります。最新情報は厚生労働省の公式資料または所轄の検疫所にご確認ください。最終更新:2026年3月|運営:Hunade(hunade.com)
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