この記事でわかること:
①第6条が禁止している食品の具体的な範囲、
②アフラトキシン・腐敗・有害物質など23年分・約5,700件の違反パターン、
③輸送・保管・仕入先管理で防ぐための実務チェックポイントの3点です。
「食品の安全性」を直接問う条文ですが、違反の多くは産地管理・輸送管理の問題であり、事前確認で防げるものがほとんどです。
※ 本記事は食品輸入に関わる実務者向けの情報提供を目的としています。個別案件への法令適用については、所轄の検疫所または専門家にご確認ください。
第6条の条文と実務的な読み方
腐敗・変質・未熟・有毒・有害物質含有・病原微生物汚染(またはその疑い)のある食品、不潔・異物混入の食品、その他人の健康を損なうおそれがある食品の販売等を禁止
腐敗・変質・または未熟であるために人の健康を損なうおそれのある食品。カビ・異臭・変色・塊化などが典型
有毒・有害な物質が含まれ、または付着している食品。アフラトキシン・重金属・自然毒などが主な対象。件数が最も多い
輸入実務での読み方:第6条は「明らかに危ない食品を止める」条文です。添加物の用途外使用(第11条)のような基準値の細かい話ではなく、食品として流通させてはいけない状態を規定しています。ただし「有害物質が含まれているかどうか」は見た目では判断できないため、アフラトキシンのような目に見えないカビ毒が典型的な落とし穴になります。
なぜ輸入食品で第6条違反が多いのか
長距離輸送中の品質劣化
産地での品質に問題がなくても、海上輸送中の温湿度管理が不十分だと腐敗・カビ・塊化が発生します。コンテナ内の結露、温度変化、換気不足が主な原因です。国内流通では起きにくい問題が輸入では頻発します。
カビ毒は産地の乾燥・保管が起点
アフラトキシンはカビ(主にアスペルギルス属)が産生する毒素です。収穫後の乾燥不足・保管中の湿気・選別不足が発生源。産地での管理が不十分だと、輸入時点でアフラトキシンが検出されます。高温・高湿の産地(東南アジア・アフリカ・南米)で特に多い。
日本の基準値は国際基準より厳しいケースも
アフラトキシンの日本の基準値(総アフラトキシン10 μg/kg)はコーデックス基準と同水準ですが、検出感度が高くなったことで以前は見逃されていたレベルも検出されるようになっています。輸出国で自国検査を通過した品が日本で引っかかるケースがあります。
違反事例データ(23年分・約5,700件)
違反パターン別の整理
| 違反パターン | 根拠 | 代表的な事例 | 多い食品 |
|---|---|---|---|
| アフラトキシン超過 | 第6条第2号 | 中国 YANTAI FENGLIN FOODSTUFF CO., LTD.(2024年5月公表)。アフラトキシン検出。乾燥不足・保管湿気が原因。 | 落花生、ピスタチオ、アーモンド、とうもろこし、乾燥果実 |
| 腐敗・変色・塊化 | 第6条第1号 | 米国 UNITED GRAIN CORPORATION(2020年度)。塊化・変色・カビ。長距離海上輸送中の湿気管理不良が原因。 | 穀物類、豆類、乾燥食品 |
| その他カビ毒(オクラトキシン・フモニシン等) | 第6条第2号 | オクラトキシンA:コーヒー豆・穀物に多い。フモニシン:とうもろこし加工品に多い。アフラトキシンほど件数は多くないが継続的に発生。 | コーヒー豆、とうもろこし、小麦 |
| 自然毒(貝毒・植物毒等) | 第6条第2号 | 麻痺性貝毒(PSP):ホタテ・カキ・ムール貝で発生。収穫海域の管理状況が鍵。 | 二枚貝、甲殻類 |
| 異物混入・不潔 | 第6条 | 虫・金属片・異物の混入。製造・包装工程の管理不足。 | 加工食品全般 |
国別の傾向
| 国・地域 | 主な違反内容 | 多い食品カテゴリ |
|---|---|---|
| 中国 | アフラトキシン、腐敗・変質 | 落花生・ナッツ類、穀物加工品 |
| 米国 | 腐敗・変色・塊化(輸送管理不良) | 穀物類、豆類 |
| 東南アジア(タイ・ベトナム・インドネシア等) | アフラトキシン、貝毒 | 落花生、スパイス、二枚貝 |
| アフリカ(ガーナ・エジプト等) | アフラトキシン | 落花生、ナッツ類、乾燥食品 |
| 南米(ブラジル・アルゼンチン等) | アフラトキシン、フモニシン | とうもろこし、落花生 |
品目別の傾向
| 食品カテゴリ | 典型的な違反内容 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| 落花生・ナッツ類 | アフラトキシン(B1・B2・G1・G2) | 収穫後の乾燥不足・保管中の湿気が主因。ロット別検査と保管条件の確認が実質必須 |
| とうもろこし・穀物 | アフラトキシン、フモニシン | 原料ロットごとの産地証明と検査証明の整合確認が必要 |
| コーヒー豆 | オクラトキシンA | 精製・乾燥工程の管理。生豆・焙煎豆ともに発生リスクがある |
| 二枚貝・甲殻類 | 麻痺性貝毒(PSP)、下痢性貝毒(DSP) | 収穫海域の管理状況と輸出国政府機関の検査証明の確認 |
| 乾燥スパイス・ハーブ | アフラトキシン、腐敗 | 高温多湿産地からの仕入れは特に乾燥・保管条件の確認を徹底 |
重要な視点:通関後も終わりではない
厚労省は「輸入時の違反事例」だけでなく「国内で発見された輸入食品の違反事例」も定期公表しています。輸入時の検査は抽出検査が中心のため、通関を通過した品が国内流通後に問題発覚するケースがあります。輸入者は通関後も自主管理の観点が必要です。
輸入前の実務チェックポイント
産地証明書だけでなく乾燥・保管条件まで確認
アフラトキシン違反の多くは「産地では問題なかった」ケースです。収穫後の乾燥方法(天日乾燥か機械乾燥か)、保管施設の温湿度管理、積付け前の選別状況まで、仕入先に確認することが再発防止につながります。産地証明書の有無だけでは不十分です。
ロット別の検査体制を要求する
アフラトキシンはロットによって濃度が大きく異なります。「過去に問題なかった」は次のロットの安全を保証しません。輸入前にロット別の検査証明(アフラトキシン分析証明書)を取得するか、日本の検査機関での自主検査を実施することを推奨します。
輸送中の温湿度管理を記録で確認
腐敗・変色・塊化の多くは輸送中の管理不良が原因です。コンテナのデシカント(除湿剤)の使用有無、温度ロガーによる温湿度記録の取得を仕入先・フォワーダーに要求することで、問題発生時の原因特定と責任の明確化ができます。
違反履歴のある国・品目は命令検査リスクを先に確認
同一国・同一品目での違反が繰り返されると、厚労省が「命令検査」を発動し、以降の全輸入品が検査対象となります。当サイトのデータベースや厚労省の公表資料で、取り扱う予定の国・品目の違反履歴を事前に確認してください。
自主検査の目安
| 食品カテゴリ | 優先して検査すべき項目 | 検査タイミング |
|---|---|---|
| 落花生・ナッツ・乾燥果実 | アフラトキシン(B1・B2・G1・G2の総量) | ロットごと。産地・収穫年が変わるたびに実施 |
| とうもろこし・穀物 | アフラトキシン、フモニシン | 産地・仕入先が変わるたびに実施 |
| コーヒー豆(生豆) | オクラトキシンA | 初回輸入時・産地変更時 |
| 二枚貝・甲殻類 | 麻痺性貝毒(PSP)、下痢性貝毒(DSP) | 輸出国の収穫海域管理証明を毎回確認 |
関連する条文
第11条(添加物・残留基準)
第6条が「危険な食品そのもの」を禁止するのに対し、第11条は「基準値を超えた添加物・農薬残留」を問題にします。アフラトキシンのような有害物質は第6条第2号、農薬残留超過は第11条第3項(または第13条第3項)というように、同じ「有害」でも根拠条文が異なります。
第13条(規格基準)
微生物汚染(細菌数超過・E.coli陽性等)は第13条第2項の成分規格で処理されることが多いです。食品の腐敗(第6条第1号)と微生物規格不適合(第13条第2項)は違反の根拠が異なる点に注意が必要です。
よくある質問
食品全般において、アフラトキシンB1・B2・G1・G2の総量で10 μg/kg(10 ppb)以下が基準とされています。この基準を超えた食品は第6条第2号に基づき販売禁止となります。ただし、規制の詳細や対象食品については厚生労働省の最新資料または所轄の検疫所でご確認ください。
あります。輸出国の検査基準と日本の基準値が異なる場合や、ロット内の汚染が不均一でサンプリングの差が出る場合があります。また、輸出国の検査後に輸送中の温湿度管理が不十分でカビが繁殖し、アフラトキシンが増加するケースもあります。輸出国の検査証明があっても、日本の検疫所での検査結果が優先されます。
第6条第1号は食品そのものが腐敗・変質している状態(カビ・異臭・変色・塊化など)を問題にします。第6条第2号は見た目には正常でも有毒・有害な物質(アフラトキシン・重金属・自然毒など)が含まれている食品を対象とします。輸入違反データでは第6条第2号の件数(約2,254件)が第6条第1号(約784件)より多く、目に見えない有害物質の問題が大きいことがわかります。
同一国・同一食品で違反が繰り返された場合、厚生労働省が「命令検査」を発動します。命令検査が適用されると、対象となる国・食品の輸入品は全件が検査対象となり、検査結果が出るまで食品を国内に搬入できません。命令検査への移行は輸入者にとって大きな負担となるため、違反履歴の事前確認と自主検査による予防が重要です。
参考リソース
情報の正確性には最善を尽くしていますが、法令の改正・条文解釈の変更がある場合があります。最新情報は厚生労働省の公式資料または所轄の検疫所にご確認ください。最終更新:2026年3月|運営:Hunade(hunade.com)
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