この記事でわかること
厚生労働省の輸入食品違反事例データ(2002〜2025年)における茶類カテゴリーの違反267件を分析しました。成分規格不適合(農薬)125件・添加物51件・農薬ポジティブリスト40件・微生物39件という構造と、ウーロン茶・緑茶・台湾産茶・インド産茶のリスク別の実態を解説します。
厚生労働省の輸入食品違反事例データ(2002〜2025年)における茶類カテゴリーの違反267件を分析しました。成分規格不適合(農薬)125件・添加物51件・農薬ポジティブリスト40件・微生物39件という構造と、ウーロン茶・緑茶・台湾産茶・インド産茶のリスク別の実態を解説します。
【データ出典】厚生労働省「輸入食品の違反事例」(平成14年〜令和7年)。
📋 目次
1. 267件の全体像:農薬が過半数を占める
267件茶類違反総数
(23年間)
(23年間)
125件成分規格不適合
(農薬:46.8%)
(農薬:46.8%)
51件添加物
(19.1%)
(19.1%)
40件その他
(農薬系:15.0%)
(農薬系:15.0%)
39件微生物
(14.6%)
(14.6%)
| 違反タイプ | 件数 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 成分規格不適合(農薬) | 125件 | トリアゾホス51件・フィプロニル30件・ブロモプロピレート22件等。中国産ウーロン茶が主体 |
| 添加物 | 51件 | 二酸化硫黄24件・サイクラミン酸7件・アルミノケイ酸ナトリウム3件等 |
| その他(農薬ポジティブリスト) | 40件 | カルバリル25件(台湾産)・インドキサカルブ4件等 |
| 微生物 | 39件 | 大腸菌群(インスタント茶・粉末茶・韓国産) |
| 遺伝子組換え | 2件 | GMパパイヤ由来茶(漢方茶の副原料) |
| カビ毒 | 2件 | プーアール茶等 |
茶類の違反は農薬(成分規格不適合125件+ポジティブリスト40件=165件・61.8%)が主体です。これは茶葉栽培に多量の農薬が使用されること、乾燥過程で農薬が濃縮されること、茶葉を直接飲食するため残留濃度の影響が大きいことが要因です。
2. 国別傾向:中国・台湾・インドが上位
| 国 | 件数 | 主な違反 | 主な品目 |
|---|---|---|---|
| 中国 | 116件 | 成分規格不適合(農薬)76件・添加物24件 | ウーロン茶(成分規格不適合43件が同品目)・緑茶・発酵茶 |
| 台湾 | 68件 | 農薬ポジティブリスト28件・成分規格不適合24件 | ウーロン茶・各種台湾茶。カルバリル(農薬)が問題 |
| インド | 24件 | 微生物9件・成分規格不適合9件 | 粉末茶・インスタント紅茶・ダージリン等 |
| 韓国 | 16件 | 微生物12件・その他4件 | インスタント粉末飲料・しょうが茶等の粉末飲料 |
3. 農薬違反165件:3大問題農薬
① トリアゾホス(Triazophos):51件(有機リン系殺虫剤)
中国産・台湾産ウーロン茶が主体。2006〜2007年に集中(2006年:13件)。茶葉害虫への殺虫目的で使用。日本の基準値(茶葉として0.05 ppm)を超えた検出が続く。
中国産・台湾産ウーロン茶が主体。2006〜2007年に集中(2006年:13件)。茶葉害虫への殺虫目的で使用。日本の基準値(茶葉として0.05 ppm)を超えた検出が続く。
② フィプロニル(Fipronil):30件(フェニルピラゾール系殺虫剤)
中国産・台湾産茶。0.003〜0.007 ppm程度の微量でも違反となる(一律基準0.01 ppm適用)。2021年以降も継続検出。
中国産・台湾産茶。0.003〜0.007 ppm程度の微量でも違反となる(一律基準0.01 ppm適用)。2021年以降も継続検出。
③ ブロモプロピレート(Bromopropylate):22件(有機塩素系ダニ駆除剤)
中国産ウーロン茶(台湾経由含む)。2006〜2008年のピーク後も散発的に検出。検出値0.2 ppm等。
中国産ウーロン茶(台湾経由含む)。2006〜2008年のピーク後も散発的に検出。検出値0.2 ppm等。
④ カルバリル(Carbaryl):25件(カーバメート系殺虫剤)
台湾産が全25件。ポジティブリスト違反(一律基準0.01 ppm超)。2013〜2016年に集中。
台湾産が全25件。ポジティブリスト違反(一律基準0.01 ppm超)。2013〜2016年に集中。
2006年に茶類違反が急増した理由:2006年にポジティブリスト制度が導入されたことで、それまで「基準なし→規制なし」だったトリアゾホス等の農薬が規制対象になりました。2006年(45件)はこの制度変更によって発見件数が急増した年です。
4. 添加物51件:二酸化硫黄・サイクラミン酸・アルミノケイ酸Na
| 物質 | 件数 | 主な産地・品目 | 問題 |
|---|---|---|---|
| 二酸化硫黄 | 24件 | 中国産茶・台湾産茶。発酵茶・ウーロン茶 | 乾燥・保存工程での亜硫酸塩使用。使用基準超過または対象外使用 |
| サイクラミン酸 | 7件 | 中国産・台湾産の甘茶・健康茶 | 指定外添加物(甘味料として使用) |
| アルミノケイ酸ナトリウム | 3件 | 台湾産粉末茶飲料 | 指定外添加物(固結防止剤)。粉末茶飲料の台湾産に集中 |
| プロピレングリコール | 2件 | 中国産 | 使用基準不適合(対象外使用) |
| 食用黄色・オレンジII | 各2件 | 中国産・台湾産 | 指定外着色料(ブレンド茶・花茶への着色) |
アルミノケイ酸ナトリウム(E554)に注意:台湾産の粉末ミルクティー(記事④・記事⑪でも解説)と同様に、粉末茶飲料でも固結防止剤としてアルミノケイ酸ナトリウムが使用されるケースがあります。台湾産の粉末茶・インスタントティー製品は成分確認が必要です(添加物規制の詳細→④ 食品添加物の日本規制と輸入違反参照)。
5. 微生物39件:インスタント茶・粉末茶に集中
茶の微生物違反39件は、インスタント茶・粉末清涼飲料として加工された製品で多く発生しています。韓国(12件)・インド(9件)・台湾(7件)が主要産地です。
| 品目 | 産地 | 違反内容 |
|---|---|---|
| インスタント紅茶・粉末茶 | インド・韓国 | 大腸菌群陽性・E.coli陽性 |
| 粉末清涼飲料(しょうが茶・高麗人参茶等) | 韓国 | 大腸菌群陽性 |
| 粉末清涼飲料(杏仁茶・南杏茶パウダー) | 中国 | 大腸菌群陽性 |
茶葉そのものよりも、加工(インスタント化・粉末化)の工程での衛生管理不足が微生物違反の主因です。「茶葉は安全だが加工品は要注意」という認識が実務上重要です。
6. ウーロン茶:最多品目の複合リスク
ウーロン茶(烏龍茶・半発酵茶)は茶類違反267件のうち最多品目で、成分規格不適合に限っても43件が同品目です。中国産と台湾産でリスクの内容が異なります。
| 産地 | 主な違反 | 主な農薬・物質 |
|---|---|---|
| 中国産ウーロン茶 | 農薬(成分規格不適合)・添加物(二酸化硫黄) | トリアゾホス・フィプロニル・ブロモプロピレート・二酸化硫黄 |
| 台湾産ウーロン茶 | 農薬ポジティブリスト・成分規格不適合 | カルバリル・フィプロニル・その他ポジティブリスト違反農薬 |
7. 輸入実務者のためのチェックリスト
✅【中国産茶(ウーロン茶・緑茶・発酵茶)】
- トリアゾホス・フィプロニル・ブロモプロピレートの試験を優先する
- 乾燥工程での二酸化硫黄使用の有無を確認する
- 命令検査の最新指定状況を輸入前に確認する
✅【台湾産茶(ウーロン茶・高山茶等)】
- カルバリル(ポジティブリスト一律基準0.01 ppm適用)の試験を実施する
- フィプロニルも確認対象とする
✅【インスタント茶・粉末茶(韓国・インド産)】
- 微生物(大腸菌群・E.coli)の試験を実施する
- 粉末製品は固結防止剤(アルミノケイ酸ナトリウム等)の確認も行う
- 茶類は農薬が主要リスク:成分規格不適合125件+ポジティブリスト40件=165件(61.8%)が農薬関連です
- ウーロン茶(中国産・台湾産)が最多品目:産地によって問題農薬が異なる点を踏まえた品目別試験設計が必要です
- インスタント茶・粉末茶は微生物にも注意:茶葉と加工品ではリスクの種類が異なります
この記事を読んで、自分の案件が気になった方へ
同じ違反が自分の輸入案件で起きるか、
事前に確認できます。
品目・原産国・仕入先の条件をもとに、止まりやすいポイントを整理します。
資料は揃っていなくても構いません。
【データ出典】厚生労働省「輸入食品の違反事例」(平成14年〜令和7年)・農薬のポジティブリスト制度(厚労省)

