香辛料・スパイス輸入の注意点|カビ毒319件・農薬残留の複合リスクを23年データで解説

この記事でわかること
厚生労働省の輸入食品違反事例データ(2002〜2025年)における香辛料・ハーブカテゴリーの違反683件を完全分析しました。カビ毒(アフラトキシン)319件・農薬残留(ポジティブリスト含む)263件(推計)・添加物83件・微生物13件という構造と、とうがらし・ナツメグ・クミン・バジルシード別の具体的な違反実態、放射線照射問題・スーダン色素・ヨウ素化塩という特殊な違反も解説します。

【データ出典】厚生労働省「輸入食品の違反事例」(平成14年〜令和7年)。件数はすべて本データの集計値です。

1. 683件の全体像:複合リスクカテゴリーとしてのスパイス

683件香辛料・ハーブ
違反総数(23年間)
319件カビ毒
(46.7%)
159件その他
(農薬系・23.3%)
93件成分規格不適合
(農薬が主体)
83件添加物
(12.2%)

香辛料・ハーブは全輸入食品カテゴリーの中で、カビ毒・農薬・添加物が同時に高水準で発生する唯一の複合リスクカテゴリーです。違反タイプの主体はカビ毒(46.7%)ですが、農薬系(「その他」159件+成分規格不適合の農薬分93件+残留農薬12件=計264件・38.7%)も極めて多く、1品目が複数の違反リスクを同時に抱えることが特徴です。

違反タイプ 件数 割合 主な物質・問題
カビ毒 319件 46.7% アフラトキシン(B1・B2・G1・G2)。ナツメグ・とうがらし・バジルシードが主体
その他(農薬系) 159件 23.3% ポジティブリスト違反(11条・13条):ジフェノコナゾール・トリアゾホス・プロピコナゾール等。とうがらしに集中
成分規格不適合 93件 13.6% 農薬(プロフェノホス・エトプロホス等)・微生物(大腸菌)が主体
添加物 83件 12.2% ポリソルベート・安息香酸・ソルビン酸・サイクラミン酸・スーダン色素・ヨウ素化塩
微生物 13件 1.9% 大腸菌群・E.coli(生鮮とうがらし・パプリカ)
残留農薬 12件 1.8% クロルピリホス・シペルメトリン等(含む成分規格との重複)
スパイスカテゴリーが「複合リスク」である理由:
①乾燥・粉末化によりカビ毒が濃縮される。②農薬を多用する熱帯農産物を原料とすることが多い。③保存のために添加物(保存料・甘味料)が使用されるケースがある。④品目によっては放射線照射が使われ、日本の基準(照射禁止)と衝突する。これらが同一品目に重なることが多く、1種類の試験だけでは不十分です。

2. 国別ランキング:南アジア・東南アジアが上位を占める理由

🇮🇳 インド

110件

🇰🇷 韓国

80件

🇨🇳 中国

73件

🇹🇭 タイ

69件

🇵🇰 パキスタン

52件

🇻🇳 ベトナム

49件

🇮🇩 インドネシア

45件

🇱🇰 スリランカ

44件

🇺🇸 アメリカ

27件

🇳🇵 ネパール

21件

インドが最多(110件)で、カビ毒43件・成分規格不適合43件・農薬系16件という、スパイスカテゴリーの問題を凝縮した国です。注目すべきは韓国が第2位(80件)という点で、これは韓国産スパイス自体のリスクというよりも、韓国産の生鮮・冷凍とうがらし・パプリカへの農薬残留(トリアゾホス・ジフェノコナゾール)が集中しているためです。

主な違反タイプ 主な品目 特徴
インド(110件) カビ毒43件・成分規格不適合43件(農薬)・農薬系16件 とうがらし・クミン・ナツメグ・ミックススパイス トリアゾホス(37件)が最多農薬。カビ毒もほぼ全品目で発生。ヨウ素化塩・スーダン色素の特殊違反も
韓国(80件) その他(農薬系)48件・成分規格不適合18件・添加物9件 生鮮青とうがらし33件・生鮮パプリカ10件 ジフェノコナゾール(19件)が最多。生鮮野菜扱いのとうがらし・パプリカの農薬問題
インドネシア(45件) カビ毒41件 ナツメグ(肉ずく)が圧倒的多数(約30件) ほぼ全てがナツメグのアフラトキシン。世界最大のナツメグ産地
スリランカ(44件) カビ毒39件 チリパウダー・ナツメグ カビ毒に特化した問題構造
パキスタン(52件) カビ毒46件 とうがらし(RED CHILLI POWDER)・ミックススパイス カビ毒が88%を占める。とうがらしパウダーで継続
ベトナム(49件) その他(農薬系)30件・添加物12件 冷凍とうがらし各種 プロピコナゾール(18件)が最多。冷凍加工品でも農薬残留
タイ(69件) カビ毒28件・農薬系20件・成分規格不適合9件・添加物5件 バジルシード(カビ毒)・とうがらし各種 バジルシードのアフラトキシン全件がタイ産。農薬はトリアゾホス11件

3. カビ毒319件:とうがらし・ナツメグ・バジルシードの実態

香辛料カテゴリーのカビ毒319件は、ナッツ・穀物と同様にアフラトキシン(B1・B2・G1・G2)が主体です。スパイスのカビ毒に固有の問題は、乾燥・粉末化による濃縮です。原料農産物の段階では基準内でも、乾燥・粉砕後に水分が抜けることで濃縮され、基準を超えるケースがあります。

1〜2,120検出値の範囲
(μg/kg)
26 μg/kg中央値
(基準値10の2.6倍)
50以上206件が
基準の5倍超
とうがらし×カビ毒162件
主要産地 中国(29件)・スリランカ(29件)・インド(23件)・タイ(18件)・パキスタン(17件)・イタリア(7件)
主な品目 とうがらしパウダー・レッドチリパウダー・チリパウダー・ドライとうがらし(乾燥・粉末品が多い)
検出値 最小1 μg/kg〜最大2,120 μg/kg(基準値10 μg/kgの212倍)。中央値24 μg/kg
特徴 粉末とうがらしはアフラトキシン汚染穀粒が混入しやすく、かつ粉末化により偏在性の影響が広がる。同一ロットでも部位によって大きく数値が異なる
ナツメグ×カビ毒85件(全件がカビ毒)
主要産地 インドネシア(40件)・インド(14件)・アメリカ(12件)・スリランカ(9件)
検出値 最小1 μg/kg〜最大772 μg/kg。中央値24 μg/kg
なぜナツメグが特にカビ毒リスクが高いか ナツメグの果実から種子(仁)を取り出す工程での水分管理が難しく、乾燥が不十分だとカビが繁殖しやすい。また種子の外皮(メース)と仁(ナツメグ)の乾燥速度が異なるため、均一な乾燥が困難。インドネシアが世界最大の産地(全生産量の約80%)であり、輸入量が多いため違反件数も多い
最新傾向 2021〜2025年でもナツメグが最も多い品目(20件)。近年も減少せず継続的な問題
バジルシード×カビ毒11件(全件がカビ毒・全件がアフラトキシン)
主要産地 タイ(10件)・カンボジア(1件)
検出値 最小14 ppb〜最大210 ppb(1ロットで100 ppb前後が複数:59・60・99・66・100・90・84・79 ppbの複数サンプル)
特徴 バジルシード(チアシードと混同されることがあるタイ産スパイス)はドリンク・デザート用途で需要が増加した品目。種子の構造上アフラトキシン汚染が起きやすく、タイ産に集中している。全ての違反がアフラトキシンで、最大210 ppbは基準値の21倍に相当
【重要】タイ産バジルシードは全件がカビ毒違反。バジルシードを取り扱う場合はアフラトキシンの試験を必須とする。

4. 農薬残留(計264件):とうがらしに集中する3大農薬

香辛料の農薬残留違反(「その他」159件+成分規格不適合93件+残留農薬12件の合計約264件)を分析すると、物質が明確に特定できる事例では以下の農薬が最多です。

① トリアゾホス(Triazophos):64件(有機リン系殺虫剤)
インド(37件)・タイ(11件)・スリランカ(7件)が主体。生鮮・冷凍とうがらし・パプリカ類が対象品目。
2007〜2009年にピーク(18件)、その後も2019年(11件)・2021年(3件)と継続検出。
日本では個別基準が設定されていない農薬への一律0.01 ppm適用が問題となるケースがある。
② ジフェノコナゾール(Difenoconazole):38件(トリアゾール系殺菌剤)
韓国(19件)・タイ(7件)・中国(4件)・ベトナム(4件)。生鮮青とうがらし・冷凍赤とうがらし・パプリカ類。
韓国産とうがらし・パプリカで特に多い。収穫後の防カビ目的で使用されるケースがある。
③ プロピコナゾール(Propiconazole):35件(トリアゾール系殺菌剤)
ベトナム(18件)・中国(5件)・タイ(5件)・韓国(4件)。冷凍赤とうがらし(14件)・冷凍きだちとうがらし(4件)・冷凍青とうがらし(3件)が主体。
ベトナム産冷凍とうがらしで集中検出。
④ ヘキサコナゾール(Hexaconazole):12件(トリアゾール系殺菌剤)
ベトナム・韓国・タイが主体。とうがらし類。
⑤ プロフェノホス(Profenofos):27件超(有機リン系殺虫剤)
インド(25件)が大半。クミン(CUMIN POWDER)での検出が集中。
農薬物質 件数(推計) 農薬の種類 主要産地 主な対象品目
トリアゾホス 64件 有機リン系殺虫剤 インド・タイ・スリランカ とうがらし(生鮮・冷凍・粉末)
ジフェノコナゾール 38件 トリアゾール系殺菌剤 韓国・タイ・ベトナム 生鮮とうがらし・パプリカ
プロピコナゾール 35件 トリアゾール系殺菌剤 ベトナム・中国・タイ 冷凍とうがらし
プロフェノホス 27件+ 有機リン系殺虫剤 インド クミンパウダー
ヘキサコナゾール 12件 トリアゾール系殺菌剤 ベトナム・韓国 とうがらし類
エトプロホス 7件 有機リン系殺虫剤 インド クミン・とうがらし
メタミドホス 5件 有機リン系殺虫剤 バングラデシュ とうがらし
「冷凍とうがらし」でも農薬は残留する:プロピコナゾール(ベトナム産:18件)に見られるように、冷凍加工された生鮮とうがらしでも農薬残留の違反が発生しています。「冷凍=加工済み=農薬が除去されている」という誤解は禁物です。農薬は凍結・解凍工程では分解されません。

5. とうがらし443件の詳細:カビ毒・農薬・添加物の三重リスク

香辛料カテゴリーの違反683件のうち、443件(64.9%)がとうがらし系(とうがらし・パプリカ・チリパウダー)です。とうがらしは最も違反の多い単一品目です。

違反タイプ とうがらし件数 主な産地 内容
カビ毒 162件(36.6%) 中国・スリランカ・インド・タイ・パキスタン アフラトキシン。パウダー品で特に多い。最大2,120 μg/kg
農薬系(その他) 151件(34.1%) 韓国・ベトナム・インド・タイ・中国 トリアゾホス・ジフェノコナゾール・プロピコナゾール等。生鮮・冷凍品で多い
添加物 60件(13.5%) ベトナム・台湾・韓国・中国 安息香酸・ソルビン酸・ポリソルベート・サイクラミン酸・TBHQ・スーダン色素
成分規格不適合(農薬) 51件(11.5%) インド・韓国・タイ プロフェノホス・エトプロホス・E.coli
残留農薬 12件(2.7%) バングラデシュ・韓国・ベトナム クロルピリホス・シペルメトリン等
微生物 6件(1.4%) インド・タイ 大腸菌群・E.coli(生鮮パプリカ)

とうがらしは形態(生鮮・冷凍・乾燥・粉末)によってリスクの種類が変わります。

  • 生鮮・冷凍とうがらし:農薬残留(ジフェノコナゾール・プロピコナゾール)と微生物(大腸菌群)が主なリスク。韓国産・ベトナム産が多い
  • 乾燥とうがらし・とうがらしパウダー:カビ毒(アフラトキシン)と添加物が主なリスク。パキスタン・インド・スリランカ産が多い。乾燥時の水分管理とカビ毒の試験が必須
  • チリソース・ミックススパイス:添加物(保存料・甘味料)が主なリスク。ベトナム・韓国・台湾産の加工品に多い

6. ナツメグ85件:全件がカビ毒・インドネシア産が最多

ナツメグ(肉ずく)の違反85件は全件がカビ毒(アフラトキシン)です。他の違反タイプがゼロという特異な構造は、ナツメグ固有の生産・乾燥プロセスにおけるカビ毒リスクの高さを示しています。

ナツメグ85件 詳細全件カビ毒
主要産地別件数 インドネシア(40件・47%)・インド(14件)・アメリカ(12件)・スリランカ(9件)・スリランカ(スリ表記含む4件)・ネパール(1件)・マレーシア(1件)・ベルギー(1件)
検出値 最小1 μg/kg〜最大772 μg/kg。中央値24 μg/kg(基準値10 μg/kgの2.4倍)
インドネシア産の特徴 40件中30件近くが「野草加工品及び香辛料:ナツメグ(肉ずく)」(乾燥した種仁)。産地はバンダ諸島・北マルク州等の伝統的ナツメグ産地。小規模農家が多く乾燥管理の均一性に課題がある
「アメリカ産」12件の意味 アメリカはナツメグの産地ではなく、インドネシア・グレナダ等からの輸入・再パッケージ品がアメリカ産として輸出されているケースが多い。アメリカ産表示でも原産地確認が必要
近年の動向 2021〜2025年でも20件のナツメグ違反(最多品目)。2022年(10件)は例年の倍。減少傾向は見られない
有機認証品も違反 「ORGANIC NUTMEG POWDER」でもカビ毒違反が記録されている(2021〜2022年)。有機認証はアフラトキシンリスクを排除しない
【実務上の注意】ナツメグはロット毎のアフラトキシン試験が必須。「ORGANIC」表示品でも試験は省略不可。複数サンプリング点から採取し、アフラトキシン偏在性を考慮したサンプリング計画を立てる。

7. クミン40件:インド産のプロフェノホス(農薬)が問題

クミン(CUMIN POWDER)40件主に農薬(成分規格不適合36件)
主要産地 インド(25件・63%)・バングラデシュ(4件)・中国(4件)・アメリカ(2件)・パキスタン(2件)
主な違反 成分規格不適合(農薬)36件・農薬系ポジティブリスト4件。プロフェノホス(有機リン系)が最多物質
プロフェノホス 検出値0.08〜0.51 ppm(複数件)。インド産クミンパウダーで繰り返し検出。その他エトプロホス・ジクロルボス・イプロベンホスも検出
カビ毒は少ない クミンのカビ毒違反はほぼ記録されておらず、農薬が主要リスク。とうがらし・ナツメグとはリスクの性格が異なる
年別傾向 2006年以降、断続的に毎年5〜10件程度が継続。命令検査で発見されるケースが多い
【実務上の注意】インド産クミンパウダーはプロフェノホス・エトプロホスを含む有機リン系農薬の試験を優先する。

8. 添加物83件:保存料・甘味料・スーダン色素・ヨウ素化塩

香辛料の添加物違反83件には、一般的な保存料・甘味料違反に加えて、スパイス固有の問題物質が含まれます。

主な添加物違反物質

物質 件数 主な産地 主な品目・問題
ポリソルベート 12件 台湾・韓国・ベトナム チリソース・バジルペースト・スパイス調整品。乳化剤として使用されるが、食品区分によっては対象外
安息香酸 12件 アメリカ・ベトナム・中国 チリソース・ピクルス。ソース類への対象外使用が多い
ソルビン酸 11件 ベトナム・韓国・中国 チリソース・スパイス加工品への対象外使用
サイクラミン酸 9件 中国・台湾・ネパール チリパウダー・スパイス加工品。甘味料として使用
二酸化硫黄 6件 ベトナム・中国 乾燥とうがらし・スパイス加工品
TBHQ 5件 インド・ネパール 油脂系スパイス加工品への酸化防止剤使用

スーダン色素(4件):とうがらしへの禁止着色料

スーダン色素(Sudan I・Sudan IV)とは:スーダン染料は工業用の合成着色料で、食品への添加は世界的に禁止されています(日本・EU・米国等)。発がん性が確認されており、食品への使用は絶対に認められません。2005〜2013年に4件(パキスタン・インド・チュニジア・韓国産)が検出されており、とうがらしパウダー・ミックススパイスの色調増強目的での使用が疑われます。
産地 品目 検出値
2005 パキスタン ミックススパイス(FISH MASALA) スーダンIV 検出
2006 インド とうがらし(CHILLI POWDER) スーダンIV 1.1 μg/g
2006 チュニジア ミックススパイス(RAS HANOUT) スーダンI 2.8 μg/g・スーダンIV 53.8 μg/g
2013 韓国 とうがらし(RED PEPPER POWDER) スーダンI 0.8 μg/g

ヨウ素化塩(3件):インド産ミックススパイスへのヨウ素強化塩

ヨウ素化塩(ヨウ素を強化した食塩)はインド・アフリカ等でヨウ素欠乏症対策として広く普及している食塩です。日本では食塩へのヨウ素添加は認められておらず、ヨウ素化塩自体が「指定外添加物」となります。インド産のガラムマサラ・チャットマサラ・カレーパウダーで3件記録されています(2011年・2015年・2025年)。

9. 放射線照射14件:乾燥とうがらし・ターメリックへの照射

日本では食品への放射線照射はじゃがいもの発芽防止以外は禁止されています(食品衛生法)。しかし海外では食品の殺菌・防カビ・害虫防除を目的とした放射線照射が乾燥スパイスに広く実施されており、照射を受けた食品を検知する試験(ESR法・TL法等)で14件が違反となっています。

主な品目 件数 主な産地 年別傾向
乾燥とうがらし 6件 タイ(4件)・中国(2件) 2007〜2025年(散発的)
パプリカ(パプリカパウダー) 2件 中国・スペイン 2011年・2020年
ターメリック(ウコンパウダー) 2件 インドネシア(2件) 2010年・2013年
放射線照射が行われる理由と日本の規制:乾燥スパイスは微生物汚染(サルモネラ・大腸菌等)のリスクがあり、欧米・アジア諸国では放射線照射による殺菌が許可されています(EU・米国・タイ・インドネシア等)。しかし日本では照射処理自体が製造基準違反となります。「海外で合法的に処理された製品」でも日本では違反となるため、輸入前に照射処理の有無を確認することが重要です。

10. 命令検査が368件(54%):最も命令検査依存度の高い食品群

香辛料カテゴリーの検査種別を見ると、命令検査368件(53.9%)が過半数を占めており、全食品グループ中で最も命令検査への依存度が高い食品群です。自主検査(111件・16.3%)は少なく、「命令検査があるから違反が発見できている」構造になっています。

検査種別 件数 割合
命令検査 368件 53.9%
モニタリング検査 149件 21.8%
自主検査 111件 16.3%
行政検査 15件 2.2%
その他/不明 40件 5.9%
命令検査が解除されたら違反は減るのか:
命令検査が特定品目・国の全輸入ロットを対象にするため、「高い発見率」を維持できています。仮に命令検査指定が解除された場合、自主検査(16.3%)だけでは同等の発見率を維持することはほぼ不可能です。スパイス輸入者は現在の命令検査を「国の管理に頼っている状況」と認識し、自主的な試験体制の強化を進めることが重要です。

なお、措置内容は廃棄(249件)と積み戻し(108件)が大半を占め、「販売済み(4件)・消費済み(2件)」も記録されています。これらはモニタリング検査で発見された後に既に流通していたケースで、スパイス輸入でも自主検査なしでは事後発覚リスクがあることを示しています。

11. 輸入実務者のためのチェックリスト

✅【とうがらし・パプリカ(形態別)】

  • 生鮮・冷凍とうがらし・パプリカ:ジフェノコナゾール(韓国・タイ産)・プロピコナゾール(ベトナム産)・トリアゾホス(インド・タイ産)を優先試験。韓国産パプリカはジフェノコナゾールの命令検査対象の有無を確認する
  • 乾燥とうがらし・とうがらしパウダー:アフラトキシン試験(パキスタン・インド・スリランカ産で必須)+放射線照射検知試験(タイ・中国産)の両方を実施する
  • チリソース・チリペーストなどの加工品:安息香酸・ソルビン酸(対象外使用)・ポリソルベート・サイクラミン酸の試験を実施する。保存料が「対象外使用」となる品目かを確認する
  • インド産とうがらし:スーダン色素(I・IV)の試験を実施する。発がん性物質であり、現在も世界的に問題が続いている

✅【ナツメグ(全産地)】

  • 全産地・全形態(粒・粉末)でアフラトキシン試験を必須とする
  • インドネシア産が最多(40件)だが、アメリカ産も12件(再パッケージ品の可能性)。原産地証明を取得し、実際の産地を確認する
  • 「ORGANIC(有機認証)」表示品でもアフラトキシン試験を省略しない
  • 複数サンプリング点からの採取で偏在性リスクに対応する

✅【クミン(インド産・バングラデシュ産)】

  • プロフェノホス・エトプロホス・ジクロルボスを含む有機リン系農薬の試験を優先する
  • クミンはカビ毒より農薬が主要リスク。試験パネルをとうがらしと別に設計する

✅【バジルシード(タイ産)】

  • 全件(11件)がカビ毒違反。タイ産バジルシードはアフラトキシン試験を必須とする
  • 複数サンプルでの検出値が84〜210 ppbと非常に高い事例あり。輸入前の自主試験が不可欠

✅【乾燥スパイス全般:放射線照射・特殊違反】

  • タイ・中国・インドネシア・スペイン産の乾燥スパイス(とうがらし・パプリカ・ターメリック等):放射線照射検知試験(ESR法・TL法等)の実施を検討する。2025年にも1件記録あり
  • インド産ミックススパイス(ガラムマサラ・チャットマサラ・カレーパウダー):ヨウ素化塩の使用有無を成分表・原材料確認で確認する
  • 全スパイス産地:命令検査の最新指定状況を輸入前に厚労省サイトで確認する
  • スパイスは「単一の試験では不十分」:カビ毒・農薬・添加物の複合リスクのため、品目と産地の組み合わせに応じた複数の試験項目設計が必要です。
  • とうがらしは形態でリスクが変わる:生鮮→農薬、乾燥・粉末→カビ毒、加工品→添加物という形態別の優先試験項目があります。
  • 命令検査が54%という異常値:スパイスは特に命令検査依存度が高い。命令検査指定の変更時には自主検査体制の強化が急務となります。
  • 「有機認証」「オーガニック表示」はカビ毒・農薬リスクを排除しない:有機ナツメグ・有機バジルシードでも違反事例が記録されています。

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【データ出典・参考情報】
・厚生労働省「輸入食品の違反事例」(平成14年〜令和7年)
・厚労省「輸入食品に対する検査命令の実施」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/yunyu_kanshi/index.html
・食品安全委員会「かび毒(マイコトキシン)」評価書
・厚労省「食品の放射線照射について」
※本記事の件数・割合はすべて上記データの集計値です。命令検査の指定状況は随時更新されるため、最新情報は厚労省公式サイトをご確認ください。
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