食品添加物の日本規制と輸入違反|「海外では合法」が通じない理由と頻出物質の実態

この記事でわかること
厚生労働省の輸入食品違反事例データ(2002〜2025年)に記録された食品添加物違反4,372件を詳細に分析しました。日本の「ポジティブリスト制度」が輸入食品にどう影響するか、どの物質・どの食品でどの国の商品が繰り返し違反しているかを整理します。加工食品・菓子・調味料・健康食品の輸入に関わる実務者向けの専門記事です。

【データ出典】厚生労働省「輸入食品の違反事例」(平成14年〜令和7年)。件数はすべて本データの集計値です。

1. 添加物違反の全体像:4,372件・違反種類2位の構造

4,372件添加物違反総数
(2002〜2025年)
18.5%全違反23,690件中
添加物が占める割合
1,878件「指定外添加物」
(使用自体がNG)
2,449件「使用基準不適合」
(量・対象が基準外)

食品添加物違反は微生物(4,489件)に次ぐ第2位です。ただし、微生物違反が衛生管理上の問題であるのに対し、添加物違反は「日本と輸出国で許可されている物質・使用ルールが異なる」という制度的ギャップに起因するケースが多く、同じ違反でも構造が異なります。

年別推移:2002〜2006年に集中、その後は横ばい

添加物違反は2002〜2004年に年間300〜370件台のピークがあり、その後2006〜2020年にかけて減少しました。ポジティブリスト制度が本格化した2000年代後半からの輸出国側の対応(日本向け仕様への切り替え)が影響していると考えられます。ただし近年(2024〜2025年)は再び130〜150件台に戻っており、新規参入国・新商品での違反が継続しています。

輸出国 違反件数 全体比 特徴
中国 1,331件 30.4% サイクラミン酸・二酸化硫黄・ソルビン酸が多い。加工食品全般・水産物・茶類
アメリカ 331件 7.6% TBHQ・安息香酸が主体。スナック・健康食品・調味料
台湾 224件 5.1% アルミノケイ酸Na・アセスルファムK・サイクラミン酸。ミルクティー・シロップ・加工食品
ベトナム 220件 5.0% 二酸化硫黄・サイクラミン酸。水産物・菓子類・調味料
イタリア 212件 4.8% アゾルビン・パテントブルーV・キノリンイエロー。菓子・リキュール・チョコレート
フランス 194件 4.4% アゾルビン・キノリンイエロー・パテントブルーV。菓子・リキュール類
インド 158件 3.6% TBHQが全輸出国最多(90件)。スナック・ビスケット・調味料
ブラジル 146件 3.3% TBHQ(66件)。スナック・レトルト食品

2. ポジティブリスト制度の基本:「指定外は一律NG」の原則

日本の食品添加物規制の最大の特徴はポジティブリスト制度です。「禁止リストに載っていなければ使える」(ネガティブリスト方式)ではなく、「許可リストに載っているもの以外は使えない」という仕組みです。

1
指定添加物(厚労省告示リスト収載)のみ使用可能。現在約500品目。
2
それ以外の物質を食品に添加・含有させることは、量の多少にかかわらず原則禁止。ごく微量でも検出された時点で違反となる。
3
指定添加物であっても、食品の種類・用途・上限量が「使用基準」として定められており、その基準内でのみ使用が認められる。
4
輸入食品は、日本向けに製造されたかどうかに関係なく、日本国内で流通する限りこの基準が適用される。「輸出国では合法・安全基準を満たしている」は免責理由にならない。
よくある誤解:「EUで承認されているから日本でも問題ない」「FDAが認可しているから大丈夫」という判断は成立しません。EU・米国・日本はそれぞれ独自の指定リストを持っており、EU承認済み・FDA承認済みでも日本未指定の物質は数多く存在します。特に着色料・甘味料・酸化防止剤の分野で乖離が目立ちます。

また、指定添加物であっても「使用基準」に違反するケースがあります。たとえばソルビン酸は日本でも指定されている防腐剤ですが、使用できる食品の種類・量が細かく規定されており、対象外の食品に使用したり、基準量を超えて使用したりした場合は違反となります。

3. 2種類の違反:「指定外添加物」と「使用基準不適合」の違い

違反の種類 意味 件数 代表的な物質
指定外添加物 日本の指定リストに存在しない物質を使用・含有。量の多少を問わず違反 1,878件 TBHQ、サイクラミン酸、アゾルビン、キノリンイエロー、パテントブルーV、アルミノケイ酸Na など
使用基準不適合 指定添加物ではあるが、使用できる食品・量・用途の基準に違反 2,449件 ソルビン酸(過剰・対象外)、二酸化硫黄(過剰・対象外)、安息香酸(対象外)、アセスルファムK(過剰)など

輸入実務の観点では、指定外添加物の方がリスクが高いといえます。使用基準不適合は量の調整で対処できる可能性がありますが、指定外添加物は「その物質が入っている」という事実だけで違反確定となるため、原材料の変更・配合の見直しが必要になります。

4. 指定外添加物の主要物質:国・食品別データで読む6物質

指定外添加物として検出件数が多い主要物質を、国・食品カテゴリー・実務上の注意点とともに解説します。

① TBHQ(tert-ブチルヒドロキノン)482件
用途 酸化防止剤。油脂・油脂を含む食品の酸化を防ぐために使用される。植物油・マーガリン・スナック菓子・インスタント食品に広く使用。
日本の規制 日本の指定添加物リストに収載されていない(指定外)。微量でも検出された時点で違反。
主要検出国 インド(90件)・中国(77件)・ブラジル(66件)・アメリカ(34件)・タイ(21件)・台湾(18件)・フィリピン(18件)
主要検出食品 菓子・加工食品(156件):スナック菓子・ビスケット・チョコレートウエハース・クラッカー類
その他加工食品(206件):レトルト食品・インスタント麺・調理用ミックス・まぐろ油漬け缶詰
野菜・果実の調整品(42件):ピクルス・漬け物・調理済み野菜製品
健康食品(10件):プロポリスカプセル・油脂系サプリメント
実務上の注意 アメリカ・EU・Codexでは一定量の使用が認められており、輸出国の規格証明書では「合格」と表示される場合がある。成分表・原材料のCoAにTBHQの記載がないか確認する。「酸化防止剤(○○)」の表記を原材料リストで精査する。

② サイクラミン酸(チクロ)493件
用途 甘味料。砂糖の約30〜50倍の甘味があるとされ、飲料・菓子・漬け物・加工食品に甘味付与目的で広く使用される。
日本の規制 指定外添加物。検出量にかかわらず違反。なお、EUでは食品への使用が認められており(一定の上限量あり)、中国・台湾でも一部使用が認められている。日米では使用禁止。
主要検出国 中国(379件)・台湾(54件)・ベトナム(40件)が大半を占める。2002〜2005年にピーク(57〜89件/年)。近年は10〜14件/年で継続中。
主要検出食品 その他加工食品(241件):漬け物(ザーサイ・らっきょう・梅干し)・シロップ漬け果実・缶詰もも・マーボーソース・たこ焼き
菓子類(42件):ひまわりの種子・ナッツ系スナック
水産物(38件):エビペーストなどの調味水産物
健康食品(21件):中国産健康食品全般
実務上の注意 中国・台湾・ベトナムから輸入する加工食品・漬け物・調味料類では、甘味料の確認が必須。原材料表示に「サイクラメート」「チクロ」「E952」等の記載がないか確認。現地成分表と日本の指定リストを照合する。

③ アゾルビン(カルモイシン)230件
用途 赤色系の合成着色料(食用赤色系)。菓子・ゼリー・飲料・リキュールなどの発色に使用される。
日本の規制 指定外添加物。EUでは「E122」として承認されており、ヨーロッパ製の菓子・飲料に幅広く使用されている。日本では指定されていないため検出された時点で違反。
主要検出国 フランス(54件)・ベルギー(23件)・イタリア(22件)・タイ(18件)・オランダ(13件)・中国(13件)・スペイン(10件)・オーストリア(10件)
主要検出食品 菓子・加工食品(102件):チョコレート・ゼリー・グミ・ビスケット・アイスクリーム・アップルパイ・カラータピオカ
その他加工食品(110件):リキュール・ジュース・ゼリー飲料
実務上の注意 欧州産の菓子・飲料・リキュールは要注意。欧州製品の成分表には「E122」と記載されており、これがアゾルビン。EUの食品表示で「E1○○」台の着色料名は日本の指定状況を個別に確認する必要がある。

④ キノリンイエロー75件
用途 黄色系の合成着色料。菓子・飲料・リキュールなどの黄色・黄緑色の発色に使用。
日本の規制 指定外添加物。EUでは「E104」として承認(ただし一部食品で表示警告義務あり)。日本では指定されていない。
主要検出国 フランス(24件)・イタリア(9件)・ベルギー(6件)・ドイツ(4件)・スペイン(4件)・オーストラリア(4件)
主要検出食品 菓子(39件):キャンディー・チョコレート・グミ・リキュール
その他(29件):リキュール・飲料
実務上の注意 欧州製の色付き菓子・リキュール。成分表の「E104」がキノリンイエローに相当。着色料の種類は「E1○○番台」を個別に確認する。

⑤ パテントブルーV77件
用途 青色・青紫色の合成着色料。菓子・ジン・リキュール等の発色に使用。
日本の規制 指定外添加物。EUでは「E131」として承認。フランス産のジン・リキュール・チョコレートでの検出が特に多い。
主要検出国 フランス(27件)・ベルギー(12件)・イタリア(14件)・スペイン(8件)・ドイツ(4件)
主要検出食品 菓子(45件):チョコレート・グミ・キャンディー
その他(27件):ジン・リキュール類
実務上の注意 欧州製の青・紫系着色菓子・スピリッツ類。クリスマス向け輸入菓子に多い傾向がある。成分表「E131」がパテントブルーV。

⑥ アルミノケイ酸ナトリウム15件
用途 固結防止剤(ケーキング防止剤)。粉末食品(粉末スープ・粉末ミルクティー・パウダー調味料)が固まりにくくする目的で使用される。
日本の規制 指定外添加物。EUでは「E554」として承認。台湾・タイの粉末インスタント食品・調味料パウダーで継続的に検出されている。
主要検出国 台湾(10件)・タイ(3件)・フランス(1件)・アメリカ(1件)
主要検出食品 台湾産ミルクティーパウダー・抹茶ミルクティー、タイ産カップパスタ付属調味料、フランス産ブリーチーズ(AOC)
実務上の注意 粉末状の調味料・ミルクティーパウダー・スープパウダーなどの台湾産・タイ産商品は固結防止剤の種類を確認する。成分表の「E554」「Sodium aluminosilicate」等の記載に注意。

その他の指定外添加物(出現件数の少ない注目物質):

  • 一酸化炭素(CO)24件:鮮度・発色保持目的で冷凍まぐろ・ブリフィレに使用。日本では食品への添加は認められていない。中国・インドネシア・フィリピン・台湾産の冷凍まぐろ・魚柵で検出事例あり。
  • メラミン19件(2008〜2009年に集中):中国産冷凍たこやき・餃子・パン生地等で2008年に15件が一時的に急増(中国産乳製品問題の余波)。近年は1件(2024年)のみ。
  • 過酸化水素(過酸化ベンゾイルを含む)24件:漂白・殺菌目的。ゼラチン・ナタデコ・フカヒレ等で検出。日本では食品への残留は認められていない(最終食品に残存していはならない)。
  • ジクロロメタン・ペンタン(溶媒系):健康食品の抽出溶媒として使用されるが日本では指定外。

5. 使用基準不適合の主要物質:ソルビン酸・二酸化硫黄・安息香酸

使用基準不適合は「日本で指定されている添加物だが、使えない食品に使っている、または許容量を超えている」ケースです。2,449件のうち上位3物質が全体の半数以上を占めます。

① ソルビン酸(ソルビン酸カリウム含む)523件
概要 防腐剤・保存料として広く使用される指定添加物。日本でも認可されているが、使用できる食品の種類と上限量が詳細に規定されている。
違反の内訳 対象外使用(282件):使用が認められていない食品への添加
基準値超過(366件):上限を超えた使用量
(一部は重複計上)
主要検出国 中国(103件)・イタリア(51件)・アメリカ(51件)・ベトナム(36件)・韓国(29件)・フランス(27件)・台湾(26件)・イギリス(20件)
主要検出食品 その他加工食品(258件)・菓子類(81件)・乾燥果実(58件)・野菜漬け物(38件)・香辛料(19件)・水産物(16件)
代表商品:乾燥すもも、ケチャップ、チリソース、ワイン、ぶどう酒、冷凍パン半製品
実務上の注意 日本のソルビン酸使用基準は食品区分ごとに上限値が異なる(例:チーズ類3.0g/kg、ケチャップ1.0g/kg、マーガリン2.0g/kg等)。欧米では認められている食品への使用が日本では対象外のケースも多い。成分表示の「ソルビン酸(K)」について食品区分と添加量を日本基準と照合する。

② 二酸化硫黄(亜硫酸塩類)1,021件
概要 漂白・防腐・酸化防止目的で使用される。亜硫酸ナトリウム・ピロ亜硫酸塩・次亜硫酸ナトリウム等も「二酸化硫黄として」の残留量で評価される。食品衛生法により使用基準が細かく規定されている。
主要検出国 中国(460件)・タイ(63件)・ベトナム(55件)・アメリカ(38件)・フィリピン(37件)・トルコ(34件)・イタリア(33件)・オーストラリア(32件)
主要検出食品 その他加工食品(673件)・果実(114件)・水産物(72件)・野菜(48件)・茶類(25件)
代表商品:乾燥あんず・乾燥かんぴょう・乾燥しいたけ・乾燥やまくらげ・塩蔵たけのこ・塩蔵くらげ・ゆでだこ・水煮あわび・陳皮・乾燥しょうが・乾燥ぶどう・水煮アサリ
実務上の注意 乾燥野菜・乾燥果実・塩蔵品・乾物系食品は特に注意。中国産の乾燥食材(乾燥きのこ・乾燥野菜・乾燥果実・海産乾物)は二酸化硫黄の残留量検査が実務上の標準になっている。基準値は食品区分によって0.030g/kg〜5.0g/kgと幅がある(例:乾燥あんず:2.0g/kg以下等)。

③ 安息香酸(安息香酸ナトリウム)339件
概要 防腐剤。日本では指定添加物だが、使用できる食品は「清涼飲料水・シロップ・マーガリン」等に限定されており、しょうゆ・ソース類・漬け物等への使用は認められていない。
主要検出国 中国(55件)・アメリカ(50件)・ベトナム(33件)・タイ(31件)・ネパール(21件)・ブラジル(19件)・インド(19件)
主要検出食品 その他加工食品(177件)・野菜漬け物・健康食品(37件)・果実製品(33件)・香辛料(19件)・水産物(15件)
代表商品:醤油・チリソース・オイスターソース・ライムピクルス・アンチョビペースト・春巻き(調味料に含有)
実務上の注意 「対象外使用」が多い物質。しょうゆ・ソース・漬け物・水産調味品への使用は日本では認められていない。アジア系の調味料・ソース類・漬け物は成分表で安息香酸の有無を確認する。ネパール産のライムピクルス・チリソースで継続的に検出あり。

その他の使用基準不適合で注意が必要な物質として、以下があります。

物質 件数 主な問題 主要検出品・国
アセスルファムカリウム 57件 使用できる食品区分を超えた対象外使用 台湾産シロップ(ブラウンシュガーシロップ・マンゴーシロップ等)、ミントタブレット
ポリソルベート80 75件+ 使用上限超過・対象外使用 中国・ベトナム産水産物・健康食品
スクラロース 26件 使用基準超過・対象外使用 中国産漬け物(甘酢しょうが・梅干し)、台湾産加工食品
イマザリル 31件 対象外使用(かんきつ類の防カビに使用されるが基準外品目への使用) チリ・アメリカ・オーストラリア産の生鮮レモン・グレープフルーツ
三二酸化鉄 21件 対象外使用(こんにゃく以外への使用) 中国産加工食品・菓子

6. 健康食品の特殊リスク:添加物違反164件の全内訳

データで特筆すべきことの一つが、健康食品カテゴリーの添加物違反です。食品グループ「健康食品」の違反件数185件のうち、164件(89%)が添加物違反です。これは他の食品カテゴリーと比較しても突出した割合です。

国別内訳

件数
中国 60件
アメリカ 36件
フランス 12件
韓国 8件
ペルー 7件
香港 5件
ブラジル 5件
その他 31件

主な違反物質

物質 件数
サイクラミン酸 21件
TBHQ 10件
安息香酸(対象外) 37件
二酸化硫黄 14件
ポリソルベート(過剰) 複数件
酸化亜鉛 1件
ジクロロメタン 1件
ペンタン(溶媒) 2件
その他指定外 複数件
健康食品の特殊リスクとは:
健康食品・サプリメントは「食品として輸入」するケースが多いですが、通常の食品とは異なる添加物が製造工程で使用されている場合があります。特に注意が必要なのは以下の3点です。

  • 抽出溶媒:植物エキス・オイル系健康食品で、日本未承認の溶媒(ジクロロメタン・ペンタン等)が使用されている場合がある
  • 「海外では食品添加物として承認」された成分:NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)・ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ(NAMPT)など、近年のアンチエイジング系成分で日本未指定のものが含まれるケースがある
  • 甘味料・保存料:サイクラミン酸を含む製品が中国産健康食品で多数確認されている(グミ形状・ドリンク形状のもの)

7. 国別・食品カテゴリー別の確認ポイント

輸出国 要注意食品 優先確認物質
中国 漬け物・梅干し・ザーサイ、乾燥きのこ・乾燥野菜、缶詰・レトルト、たこ焼きなど冷凍食品、茶類・乾燥果実 サイクラミン酸二酸化硫黄ソルビン酸(対象外・超過)TBHQスクラロース(超過)
台湾 ミルクティーパウダー・抹茶ドリンクパウダー、シロップ類、チューインガム・キャンディー アルミノケイ酸NaアセスルファムK(超過)サイクラミン酸
フランス・ベルギー・イタリア カラー系チョコレート菓子、色付きキャンディー・グミ、ジン・リキュール・スピリッツ アゾルビン(E122)キノリンイエロー(E104)パテントブルーV(E131)
インド スナック菓子、ビスケット・クラッカー、調理用ミックス、カレー・スパイス系加工品 TBHQ安息香酸(対象外)
ブラジル・ペルー スナック菓子、レトルト食品、油脂系加工品 TBHQ安息香酸
タイ・フィリピン 水産物・えびフライ等、ドリンク・ジュース、乾燥野菜 二酸化硫黄TBHQ安息香酸(対象外)
ベトナム 水産物・調味水産物、菓子・スナック、乾燥食品 二酸化硫黄サイクラミン酸安息香酸(対象外)
チリ・アメリカ・豪州 生鮮かんきつ類(レモン・グレープフルーツ) イマザリル(防カビ剤・対象外品目)

8. 輸出国の添加物規制と日本の違いの調べ方

「輸出国では合法」「現地の成分表に記載がない物質がなぜ違反になるのか」という疑問に実務的に答えるための確認手順を整理します。

1
厚労省「食品添加物の指定等に関する指針」・告示リストで日本の指定状況を確認
厚労省ウェブサイトで「指定添加物リスト」を確認。物質名(英名・略称含む)で検索し、日本で指定されているかを確認する。
URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuhin-additives/index.html
2
輸出国の食品添加物規制を確認し、日本との差異を把握する

・EU:European Food Safety Authority(EFSA)のE-number一覧。「E1○○番台(着色料)」「E2○○番台(保存料)」「E3○○番台(酸化防止剤)」を個別に確認。
・アメリカ:FDA「GRAS(Generally Recognized As Safe)」リスト・21 CFR(Code of Federal Regulations)。
・中国:GB 2760(食品安全国家標準 食品添加剤使用標準)が中国の主要規格。
・Codex(国際食品規格委員会):GSFA(General Standard for Food Additives)が国際基準の参照資料。
3
原材料の成分表(全成分リスト)をサプライヤーから入手する
サプライヤーに依頼する際、「日本向け輸出のため、使用添加物の全リスト(物質名・E番号・CAS番号を含む)をください」と明示して依頼する。成分表示(食品ラベル)の記載だけでは不十分で、製造時に使用した全添加物リスト(一括表示では見えないキャリーオーバー物質も含む)の確認が必要。
4
入手した添加物リストを日本の指定リストと1物質ずつ照合する
指定添加物かどうか・使用基準(使用できる食品・上限量)に合致しているかを確認する。不明点は輸入食品の食品衛生相談を行っている検疫所(最寄りの厚労省検疫所の食品衛生担当)に相談することが可能。
5
試験機関での事前分析(輸入前の自主検査)を実施する
特に添加物違反リスクが高い品目(菓子・調味料・加工食品)は、輸入前に日本国内の登録検査機関(FAMIC系・民間検査機関等)に依頼して添加物スクリーニング検査を実施することを推奨。検出された場合は輸入前に判明するため、廃棄・積み戻しリスクを回避できる。
「キャリーオーバー」に注意:原材料に含まれる添加物は、最終製品の食品表示に記載されない場合があります(キャリーオーバー:技術的に機能が発揮されないほど微量の場合)。しかし食品衛生法上は検出される限り違反となります。原料段階から添加物の使用実態を確認することが必要な理由の一つです。

9. 輸入実務者のためのチェックリスト

✅【サプライヤー選定・契約時】

  • 使用添加物の全リスト(E番号・CAS番号含む)を入手し、日本の指定添加物リストと照合する
  • 製品が日本向けに特別仕様で製造されているか(日本未指定添加物が除外されているか)を確認する
  • 原材料サプライヤーの添加物使用状況まで把握することを契約に盛り込む(キャリーオーバー対策)

✅【加工食品・菓子・調味料の輸入時:物質別チェック】

  • スナック菓子・インスタント食品(アジア・欧米産):TBHQの使用有無を原材料リストと試験で確認する
  • 色付き菓子・グミ・キャンディー・リキュール(欧州産):アゾルビン(E122)・キノリンイエロー(E104)・パテントブルーV(E131)の有無を確認する
  • 漬け物・梅干し・シロップ漬け果実(中国・台湾産):サイクラミン酸・スクラロースの使用基準外使用を確認する
  • 乾燥食材・乾燥野菜・乾燥きのこ・塩蔵品(中国産):二酸化硫黄の残留量を試験で確認する
  • チリソース・オイスターソース・醤油・漬け物(アジア産):安息香酸ナトリウムの対象外使用を確認する
  • 粉末ミルクティー・スープパウダー(台湾・タイ産):アルミノケイ酸Naの使用有無を確認する
  • シロップ類(台湾産):アセスルファムKの使用基準超過を確認する
  • 生鮮かんきつ類(チリ・アメリカ・オーストラリア産):イマザリル(防カビ剤)の残留量・対象品目を確認する

✅【健康食品・サプリメントの輸入時】

  • 製品の全成分リスト(添加物・賦形剤・抽出溶媒を含む)を入手し日本の指定添加物リストと照合する
  • アンチエイジング・機能性素材(NMN・NAMPT等)は日本の指定状況・規制上の位置付けを事前確認する
  • 中国産の甘味料含有健康食品はサイクラミン酸の試験を実施する
  • 植物エキス系健康食品は抽出溶媒(ジクロロメタン・ペンタン等)の使用有無をサプライヤーに確認する
  • 「食品」として輸入するか「医薬品」として輸入するかの区分(薬機法との関係)も並行して確認する
  • 「EUで承認=日本でOK」ではない:アゾルビン・キノリンイエロー・パテントブルーVはEU承認済みだが日本は未指定。欧州産の色付き菓子・リキュール類は特に注意が必要です。
  • 「中国では合法の甘味料」が日本では即違反:サイクラミン酸は中国・EUで一定の使用が認められていますが、日本では指定外。23年間で493件という継続的な検出がその根深さを示しています。
  • 使用基準不適合は「量の問題」だけではない:「対象外使用」(認められていない食品に使う)が非常に多い。安息香酸のしょうゆへの使用、ソルビン酸の使用対象外食品への添加など、量より食品の種類の確認が先決です。
  • 健康食品は特別な注意が必要:違反の89%が添加物という特殊なカテゴリーです。一般の食品と同じ確認では不十分で、製造工程の全成分確認が必要です。

リスクがわかった。では仕入先に何を確認すればいいか。

この物質が自分の輸入品に含まれるリスクがあるか、
仕入先に何を確認すべきか整理できます。

品目・原産国・仕入先の情報をもとに、確認すべき項目を具体的に整理します。
資料は揃っていなくても構いません。

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【データ出典・参考情報】
・厚生労働省「輸入食品の違反事例」(平成14年〜令和7年)
・厚労省「食品添加物の指定等に関する指針」・「指定添加物リスト」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuhin-additives/index.html
・厚労省「食品、添加物等の規格基準」(昭和34年厚生省告示第370号)
・欧州委員会「EU食品添加物データベース」(E番号一覧)
・Codex Alimentarius「General Standard for Food Additives(GSFA)」
※本記事の件数・割合はすべて上記違反事例データの集計値です。食品添加物の指定状況・使用基準は随時更新されるため、最新情報は厚労省公式サイトをご確認ください。
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